紫式部はなぜ源氏物語の構成を
五十四帖にしから雲隠れ
(雲隠れを入れると五十五帖になる)
という流れで光源氏を消えさせたのか
この続きは幻で語ろう

さて、落葉宮はなぜ夕霧を嫌うのか
夕霧は亡き夫、柏木の親友であり
義妹の夫であるということ、しかも
子だくさん、とうてい再婚の相手ではない



落葉の宮への思いがつのる夕霧
一条御息所は病気の為
落葉の宮とともに
小野(京都東北、比叡山麓)
山荘に移ります

鹿も寄り来るような小野の山荘に
落葉の宮を尋ね、思いを告げる夕霧
しかし、宮はついに心を開きません

<源氏物語オープニング曲>


折しも立ちこめる夕霧
まかでむ方も見えずなりゆくは如何すべき」
といってに詠みけた



山里の物哀れな情趣をさらに増す
夕霧が立ちこめ、
ここから立ち返る気になれません
今日は泊めていただけないでしょか

いくら深い霧であっても
山がつのような賎しい住まいに
来たあなたのような心の浮ついた
方を引き留めはしません
(お泊めるするわけにはまいりません)
山賤(やまがつ)
木こりなど山に住む人。

嘆き、訴え、脅し、言葉を尽くして
迫る夕霧に、追い詰められた落葉の宮
思わず口ずさんだ
みや

私一人が不幸な男女の仲らいを
知る者の例として、柏木様のために
残した涙の上に、さらに、
あなたのことで袂の袖も朽ちるほどに
涙を流し、わが名を汚さなければ
ならないのでしょうか

私が濡れ衣をお着せしなくても
総じて、世間に立ってしまった(柏木との)
汚名は隠すことができません




八月中旬、夕霧は小野を尋ね、
落葉の宮かき口説き一夜を過ごす

一条御息所夕霧への贈歌

女郎花が萎れている野に
(宮が泣き沈んでおられるこの宿に)
あなたはどうお思いになって
ただ一夜だけお泊まりになったの
でしょうか

秋の野の草の茂みを分けて
そちらにお伺いいたしましたが
宮と仮寝の枕を結びはしておりません
(かりそめの契りなど結んではおりません)


一条御息所夕霧の真意を確かめる
手紙を夕霧に送るが、その手紙は
嫉妬する雲居雁に奪われてしまう


返事が無いのを悲しんだ一条御息所
病気が悪化してついに死去します
夕霧はその後も通い続けるが落葉の宮
拒否は変わらなかった

雲居雁の嫉妬と不安はますます
大きくなる

落葉の宮は出家を希望するが
朱雀院に制止されるのでした


あなたのお悲しみをどのように
考えてお慰めすればよいのでしょう
後に残られた宮が恋しいのですか
お亡くなりになった御息所のことが
悲しいのですか

特に誰をといって悲しみに沈んで
いるのではありません
はかなく消える露も草の上のこと
だけとは思われないこの世ですから



夕霧
落葉の宮を都に戻して
求愛を続け、女房の手引きで塗籠(ぬりごめ)
に隠れている落葉の宮にやっと
逢うことができます

雲居雁の怒りは頂点に達し
父親の邸に帰ってしまう



夕霧の脱ぎ捨てた単衣の
袖を引き寄せて詠んだ雲居雁の歌

慣れ親しんであたらし味の
なくなった身(長年連れ添って夫に飽きられた身)
恨むよりは、いっそうのこと
尼になってしまおうかしら



朝夕に泣く音のように音を立てる
小野の山は、私の絶え間なく流す
涙なのだろうか。あの音無の滝よ


母君を葬った峰の煙と一緒になって
思いもしない方向になびかないで
いたいものよ(母君の後を追って死んでしまいたい
夕霧様になびくようなことはしたくはないものよ)


亡き母君への悲しさを
慰めようもない形見の品として
涙で曇る玉の箱だこと


ともあれ、
夕霧は宮のますますの不興を買い
雲居雁も実家に帰ったままで
夕霧を無視まめ人の夕霧

いかなる人、かうようなる事(色恋)、
をかしう覚ゆらむなど、物懲りしぬべう覚え」
るのである。宮、そして、夕霧雲居雁
のその後を語らずに夕霧の巻は閉じる

次回、御 法みのり
さらば紫の上

<源氏物語エンディング曲>