源氏物語  光源氏
紫式部の見た平安時代

ともに愛まみれよう
淡いじゃ濃いじゃ
葉も緑さす平安の苑
壱や


春暮に
木の実なるほど
哀れ身ぞ
影さす姿に 春の名残を

壱や


平安時代、
携帯も無く、自動車も無い
交通手段は殆どなく
郵便局も無い

恋愛はどうしたんやろ。
近距離だろうが遠距離だろうが
不便こそ愛おしくなる…おそらく

連絡の手段は…手紙
男性から女性には下女に
手紙を持たせた。

もちろん一般人は自由に逢えた…かも
しかし当時の平安貴族には
許されぬ恋が多かった…源氏物語では

平安の世の京都は…恋の町
その中でも平安貴族の
恋愛事情は今とは違って
不自由なればこそ想いが募る

しかも求愛は和歌にして華やかに
和歌の言葉は今で言う…口説き
その言葉は美しくあり
情熱的であったという。

恋心を伝え、伝えられた
そこには言霊(魂)が宿ると言われる
それだけに贈る主は…必死

先ずはその源氏物語に
関わる和歌数百から特に有名な
歌を五つ抜き出しました。

光源氏の時代の…恋の手紙恋文
紫式部の源氏物語に会いに行こう


時空を超えるような音楽




〈壱〉
♧光源氏 が初恋の相手
藤壺
へ贈った和歌(恋文)


      物思ふに  立ち舞ふべくも
あらぬ身の  袖うちふりし
      心知りきや

あなたを想い、
舞うこともやっとという
私の心をご存知でしょうか
あなたへと振る袖の心を知らない
わけではないでしょう

*藤壺の宮の前で舞う光源氏
その宴の後に藤壺へこの和歌を贈った
袖を振るとは、当時の愛情表現。

この時点では既に藤壺のお腹には
光源氏の子を身ごもってしまって
いるという状況…だ、そうです




〈弐〉
♧光源氏若紫(紫の上)
に出会った時に贈った恋文


紫の上
恋多き光源氏の相手として
有名な源氏物語の第二の主役と
言ってもよい存在の女性
光源氏との歳の差は
八から十歳くらいで紫の上
八歳の時に…すでに

        面影は  身をも離れず  山桜
心の限り 
 とめて来しかど  夜の間の風も、
うしろめたくなむ

山桜のようなあなたの美しい
面影が私の身からはなれません
私の心の全てを置いて留めてきたのですが
夜風にて花が散るのではと心配に
なります


偶然見かけた紫の上に一目惚れ
(八歳の女の子)
花の散る」という表現は
山桜に見立てた紫の上が他の誰かに
引き取られることをさす


〈参〉
♧光源氏明石の君へと
詠んだ恋歌



源氏物語では、数多くの光源氏の
恋のお相手が登場します
その中でも、「藤壺の宮」「紫の上」
次ぐ三番目に有名な女性が「明石の君」
です

明石の君は、
光源氏の子を産む女性ですが
妻としての地位は 「紫の上」「花散里」
次いで三番という立ち位置でした
その明石の君と出会った時の和歌

      むつことを  語りあはせむ
    人もがな憂き世の夢も
                 なかばさむやと

あなたと睦まじき語り合えることが
できたなら
きっとこの憂き世の辛い夢も
半分ほどは醒めるのではないかと
思います

光源氏は、異母兄である朱雀帝
に嫁ぐはずだった朧月夜と関係をもち
異母兄の母に激怒される
そのため光源氏は自粛し自ら京を
出て須磨へ、そして明石へと流浪する
そこで出会ったのが明石の君
そこで自粛と言いながら口説くのです


〈四〉
病床の紫の上が詠んだ和歌と
それにたいする返歌


紫の上から光源氏

光源氏に見初められ、妻として
不動の地位を確立した紫の上
歳の差からすると、光源氏よりも
若いはずですが、病によって倒れます
そんな病床の紫の上が最期を
予感して詠んだ和歌。


おくと見る  
ほどぞはかなきともすれば
風に乱るゝ  萩の上露

起きてはみるけれど、
もうこの命が消えるのは、
しばらくの間でしょう。ともすれば
風に乱れる萩の葉の上に
ある露のごとく、先は儚いものです

取り乱すことなく、もうすぐ
潰えそうな命だと、静かに告げる紫の上
そんな和歌に対し、光源氏が返した
和歌

光源氏から紫の上へ

      ややもせば  消えをあらそふ
露の世に  後れ先だつ  
            ほど経ずもがな

ともすれば我先にと争うように
消えていく露のような儚い世です
だからせめて、どちらかが遅れ残されたり
先立ってしまったりせず、
一緒に消えたいと思っているのです

どうか一人残さないで欲しい
和歌を詠みながら、光源氏は
拭うことができないと涙を流します
そんな別れの場面に詠まれた
美しくも儚い和歌


〈五〉
♧光源氏が亡くなった紫の上
想い詠んだ和歌

最愛の妻、紫の上を亡くした光源氏
彼はその後一年間、ずっと紫の上
想い涙するという苦しい日々を過ごす
ことになります。
そんな中詠んだ和歌




     大空を  かよふまぼろし 夢にだに
見えこぬ魂(たま)の
        行く方たづねよ

大空を
自由に翔ける幻術士よ
夢にも姿の見えないあの人の
魂の行方を捜してきておくれ
この和歌を詠んだ光源氏は
一年間、他の女性のことは考えず
また、誰と会っても紫の上
思い出すという日々を過ごします



紫式部の源氏物語
次回、宇治編に続く。
ありがとう。


参考動画

宇治源氏物語ミュージアム


源氏物語を知るのには
この動画が参考になります

源氏物語ミュージアムと
宇治市植物公園のスタッフに
よる源氏物語と花の関係を
説明してくれてます



これにてしつれい。