それはアイスクリームだった。バニラ味で、ファミリーパックの安いものだったと思う。

なぜ吐こうと思ってしまったのかは覚えていない。


私は子供のころひどく乗り物酔いをするタイプで、バスで行く遠足や家の車での旅行も恐怖だった。酔って吐いてしまうことが怖かった。

(免許をとって、自分で運転するようになってからは、なぜか乗り物酔いをしなくなった・・・。何故?笑)

「嘔吐恐怖」とまではいかなかったけれど、吐くという行為に少なからず嫌悪感があったのは確か。


それに、当時は「摂食障害」や「過食嘔吐」はあまり知られた言葉ではなかった気がする。

私自身も知らなかった。

「過食症」「拒食症」は一般的な言葉としては知っていたかもしれない。

その程度だった。

確かに言えることは、吐くことは異常だ、という認識は最初はあったということ。


抵抗感がなくなったのは、お酒を飲むようになったことが1つの理由のような気がする。

悪酔いして吐くことは本当に気持ちの悪いことだったが、吐いた後はおなかもからだも軽くスッキリした。そんな経験が重なって、あの時みたいに吐ければスッキリする、と思ってしまったのだろうか・・・。


気持ちが悪いわけでもなく、食べ過ぎているわけでもないので、のどに指を突っ込んでもそう簡単には出てきてくれなかったが、食べたことをチャラにできるなら辛くても苦しくてもいい、とトイレの中で独り必死の思いだったことを記憶している。


デロン、とアイスは出てきた。


これで食べても太らないじゃないか、と思った。思ってしまったのだった。