昨日、南部の気候について書いたので、
今日はこの気候の中で咲く花について書きたいと思います。

どうして南部の紹介をするのに花の話をするのか、と思うかもしれません。
みなさんがアメリカの街、と聞いて心に描く景色は、
恐らくニューヨークやロサンゼルスのような大都市の景色ではないかと思います。
確かにニューヨークやロサンゼルスについて知りたいとき、
花について知ることはあまり役に立ちそうもない気がします。

でも南部のほとんどの景色はそういった大都市のものとは違います。
高いビルのある町もありますが、ほとんどは何もない田舎です。
田舎で公共の交通機関が発達していないため、
どこにでも車のための大きな道路が通っていますが、
いかにも無理やり道路を通した、という感じで、
両脇には大小の木が生え、草が生い茂って、
そのまま林へと通じていたりします。
だから、道路の脇で咲いている花は南部の景色の一部で、
欠かせないものなのです。




crapemyrtle





南部でよく見られる花の一つ目は、
日本でもおなじみの、サルスベリです。
英語ではクレイプ・マートルと言います。

南部のクレイプ・マートルは
2-3メートルくらいの大きさで、
厳しい環境でもよく育つので、
高速道路の脇などにも植えられていたりします。

花が咲く季節は夏です。
濃いピンクと白の二色がありますが、
特に濃いピンクの方は、夏の強い日差しの中で、
満開の花がとてもまぶしく見えます。
一つ一つの花の寿命はそんなに長くはありませんが、
無数の小さな花が後から後から開くので、
夏中元気いっぱいに咲いています。











magnoliatree




magnoliaflower




二つ目は、マグノリアです。
北部にもマグノリアはありますが、南部のものとは違います。
高くて大きな木に、厚くて大きな葉っぱがついていて、
夏になると大きくて真っ白な花をつけます。

『アンクル・トムの小屋』を書いたストウの他の作品に、
『ドレッド』という小説があります。
これも奴隷制のアメリカ南部を舞台にした小説です。
この小説の中に、「マグノリア」と呼ばれる
プランテーション・ハウス
(黒人奴隷を大勢抱えた大農場主の邸宅)
の描写があります。
主人公ニーナの恋人の姉の住む家です。

この美しい姉はニーナの良き手本となり、
ニーナは恋人からの助けも得て、
徐々に世間知らずの少女から大人の女性へと成長します。
ニーナのその姉と恋人との交流、
そこにある美しいプランテーション・ハウスの描写が印象的で、
私は、初めて日本でその小説を読んでからずっと、
マグノリアってどんな花だろう、と思っていました。
なので2年半前に初めてアメリカ南部に来て真っ白なその花を見たときは、
とても感動しました。
花言葉は「威厳」で、ルイジアナ州とミシシッピー州の州花でもあります。










gardenia




三つ目はガーデニアです。
クチナシ科の花で、10センチ弱くらいの白くて可憐な花です。
強くて甘い匂いがとても印象的で、
南部の暑い気候と、貴族的な雰囲気によく合っていると思います。
この花は他の二つと違ってあまり外で見かけず、
親しくさせていただいているご家族のお家のお庭で見ただけなのですが、
昔はきっともっとたくさん咲いていたのだと思います。
そのお家のお母さん(小さな孫がいるおばあちゃんです)が、

「昔は南部のソロリティー(お金持ちの家の女子大学生が入る社交クラブみたいなもの)
の女の子はみんなガーデニアの香水をつけていたものよ。」

と、言っていました。