今日のニュースを知って、共謀罪の危機感がまた募っています。

本当に名前だけを変えて、「テロとの戦い」を目的とすると謳うのですね。

テロって?あるいは「」が外れたとしても、そもそもテロとは?


東京新聞(共同通信) 2007/2/27 「テロ等謀議罪」を了承 「共謀罪」修正で自民部会
 「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法などの改正案の修正作業で、自民党法務部会の「条約刑法検討に関する小委員会」(笹川尭委員長)は27日、共謀罪を「テロ等謀議罪」と変更し、対象犯罪を政府案の600以上から123-155と4、5分の1程度に絞り込んだ「修正案要綱骨子」を了承した。

 小委員会の早川忠孝事務局長は、修正案を来月中にも民主党側に示し、実務者レベルでの協議を進める考えを示した。継続審議となっている政府案の修正が狙いだが、参院選前の法案成立は困難視されている。

 小委員会では共謀罪の名称を「テロ・組織犯罪謀議罪」と改名することで大筋了承していたが、さらに短縮。

対象犯罪も修正原案では116-146だったが、傷害や窃盗などを加えた。(共同)


YOMIURI ONLINE 対象犯罪を削減、共謀罪修正案要綱を自民小委が了承
 自民党の条約刑法検討小委員会(笹川尭小委員長)は27日午前の会合で、共謀罪を創設する組織犯罪処罰法改正案について、対象犯罪を4分の1以下に削減する修正案要綱を了承した。

 自民党は民主党の協力を得るため、今国会での成立は目指さない方針で、昨年の通常国会以降、途絶えている修正協議の再開を近く民主党に申し入れる。笹川小委員長は修正協議について、「慎重に進めたい」と述べ、対象犯罪をさらに削減することも含め、民主党との歩み寄りを模索する考えを示した。

 共謀罪は、テロ集団、暴力団などの組織的犯罪集団が犯罪を謀議、計画することを罪とするものだ。政府案は「懲役4年以上の罪」(罪種600超)を対象犯罪としたが、民主党などが「対象が広すぎる」と反発したため、修正案要綱ではテロ、薬物、銃器、密入国・人身取引、組織犯罪の5類型に限定し、罪種を4分の1以下に絞り込んだ。

(2007年2月27日12時13分 読売新聞)

これと同時に、プロバイダ責任制限法ガイドラインが公開された、このシンクロが、とっても気味悪いです。


Internet Watch 2007/2/26 ネット上の権利侵害、発信者情報の開示基準でISPにガイドライン

 プロバイダ責任制限法ガイドライン等協議会は26日、「プロバイダ責任制限法 発信者情報開示関係ガイドライン」を策定し、公表した。【以下略】


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まず、共謀罪自民党案 (PDFです)。左記リンクにあるNews for the People in Japan に掲載された2/6付の資料を先日少し読んでいましたが、絞り込むを宣言しているくせに、小さなところが随所、人を恐怖に陥れるように読み取れて仕方がありませんでした。

単にわたしの無理解からくるところだけならよいのですが、明らかな矛盾もあるように思えます。


自由民主党政務調査会法務部会
条約刑法検討に関する小委員会第2回会合
平成19年2月6日(火)08:00~  党本部707号室

* 次回会合は、2月13日(火)午前8時より、党本部リバティー4号室にて開催予定。
法務省出席者
深山 卓也 大臣官房審議官
三浦 守  大臣官房審議官
大谷 晃大 刑事局刑事法制管理官
岡本 章  刑事局局付

外務省出席者
長嶺 安政 総合外交政策局審議官
内川 昭彦 総合外交政策局国際組織犯罪室長 
衆議院法制局出席者
橘 幸信 第二部長
山崎 耕史 第二部第一課長


本来はこちらも法解釈の立場、国際条約批准の基準に沿って精査すべきだし、以下の疑問はピント外れかもしれないのですが、楽観を装った報道こそに、なんとしても早期成立を完遂するぞ、という思惑が見え隠れして、いずれ拡大あるいは運用する側の「フリーハンド」への狙い、というものがあるように受け取れます。


2/6の内容から解せないところ、一般市民の生活に影響を与えかねないように見えてしまう箇所をいくつかピックアップします。
(繰り返し、法解釈はプロにお任せしたほうがいいけれど、ともかく随所、納得ができません)


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身近なところで、まず「電波法」の該当箇所。


§107(無線設備等による日本国憲法等を暴力で破壊することを主張する通信の発信)
§108の2① (無線設備の損壊等による無線通信の妨害)

これらは、「無線設備又は第100条第1項第1号の通信設備」に対しての「破壊を主張する通信」に関する共謀を取り締まるものなので、それぞれ電波法を参照してみる ことにします。


まず、ひとつめです。


第107条 無線設備又は第100条第1項第1号の通信設備によつて日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する通信を発した者は、5年以下の懲役又は禁こに処する。

では、上で挙げられている第100条第1項第1号とはなに?というと、


第8章 雑 則
(高周波利用設備)
第100条 左に掲げる設備を設置しようとする者は、当該設備につき、総務大臣の許可を受けなければならない。
1.電線路に10キロヘルツ以上の高周波電流を通ずる電信、電話その他の通信設備(ケーブル搬送設備、平衡2線式裸線搬送設備その他総務省令で定める通信設備を除く。)

ここで素人として疑問が浮かびます。
総務大臣の許可を得る必要のあるような大掛かりな設備(100条に定めたもの)に対し、アナーキーな予告を通信しようと共謀したら(試みたら)NGだ、と。
この「その他総務省令で定める通信設備を除く」装置の線引きは完璧なまでに明確なのでしょうか?
免除されていると理解し、気楽な気持ちで臨んでいたら、いやそれはあなたの誤解だと恫喝され(以下略)、ということには?


それと、電波法について共謀罪の対象となっている以下の無線機器の条項に対しても、疑問が残ります。


第108条の2 電気通信業務又は放送の業務の用に供する無線局の無線設備又は人命若しくは財産の保護、治安の維持、気象業務、電気事業に係る電気の供給の業務若しくは鉄道事業に係る列車の運行の業務の用に供する無線設備を損壊し、又はこれに物品を接触し、その他その無線設備の機能に障害を与えて無線通信を妨害した者は、5年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。

これはつまりは、ライフラインたる通信インフラに妨害を与えようと共謀したら罰すると。


でもですよ、


2 前項の未遂罪は、罰する。

というわけで、すでに未遂罪が規定されているのに、さらに共謀罪の対象とされているのは単なるミステイクでしょうか?

「未遂を目的とした共謀」はできないので、であれば、「たかだか未遂に終わることが明らかな程度の軽微な相談や与太話も共謀と見なす」なんて腹積もりで、ここのところ二重の予備罪を設定したわけではないんですよね?


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有線電気通信法 に関わる部分。

(罰則)第13条 有線電気通信設備を損壊し、これに物品を接触し、その他有線電気通信設備の機能に障害を与えて有線電気通信を妨害した者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

有線の通信設備の「機能に障害を与え」ることを相談することが共謀とされるなら、たとえば、あのサイトってDDoS攻撃にどこまで耐えられるのかな、大丈夫なのかな?と見積もったら、それが共謀とされる恐れはゼロでしょうか。


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日米地位協定についてもことの筋からして当然のように共謀罪の規定が残されています。


日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(日米地位協定)

このあたりとても敏感に反応したくなります。

前出の自民党案での共謀罪の対象は第五条 です。


(軍用物を損壊する等の罪)
第五条  合衆国軍隊に属し、且つ、その軍用に供する兵器、弾薬、糧食、被服その他の物を損壊し、又は傷害した者は、五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

「被服その他の物」を破壊や傷害することへの共謀。そもそもの解釈の余地が広すぎ、住んでいるところが基地の近くだった、町や村に基地がやってきたという場合、合衆国軍隊に属するものには異議を唱えることすらできないよ、という脅しでしかない。

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ほとんどのネットを読み書く人にとって身近なのは、

「5 その他、資金源犯罪など、暴力団等の犯罪組織によって職業的文は反復的に実行されるおそれの高い犯罪」というカテゴリの中の、 凶悪犯罪的と見なされる以外にところ、どんな方もほぼ対象となりうる規定だと思います。


商標法
 §78 (商標権等の侵害)
著作権法
 §119(著作権等の侵害等)
特許法
 §196(特許権等の侵害)

著作権法 第8章 罰則第119条 次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1.著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害した者(第30条第1項(←引用者注:侵害とみなす行為を提示している)(第102条第1項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第113条第3項の規定により著作者人格権、著作権、実演家人格権若しくは著作隣接権(同条第4項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第120条の2第3号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は第113条第5項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)
2.営利を目的として、第30条第1項第1号(←引用者注:私的使用のための複製を規定していて「デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器」にも言及している)に規定する自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者


何ならば侵害にならなさそうでしょう?

また、著作権法の非親告罪化などが成立していまうと、この点、日常会話やネットももっとも脅かされかねないところです。


第30条第1項第1号 (←引用者注:私的使用のための複製)
3 次に掲げる行為は、当該権利管理情報に係る著作者人格権、著作権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
1.権利管理情報として虚偽の情報を故意に付加する行為
2.権利管理情報を故意に除去し、又は改変する行為(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による場合その他の著作物又は実演等の利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる場合を除く。)
3.前2号の行為が行われた著作物若しくは実演等の複製物を、情を知つて、頒布し、若しくは頒布の目的をもつて輸入し、若しくは所持し、又は当該著作物若しくは実演等を情を知つて公衆送信し、若しくは送信可能化する行為

送信可能化は送信の未遂行為にも、あるいは独立した自前インフラ構築にも見えますが、ごく一般的なハード購入も送信可能化のための共謀とみなされかねない、と怖がってみたくなります。


息もできないほどの心配が、「運が悪いと息の仕方でと引っ張られる」、とその程度の緩和なのではないでしょうか?


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共謀罪ひとり妄想は今はこのくらいにして、専門家のご意見を検索しインプットしておこうと思います。

ここで、もうひとつ、連動しているように見えるプロバイダ責任制限法について。


社団法人テレコムサービス協会 プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会
「プロバイダ責任制限法 発信者情報開示関係ガイドライン」の公開について

  ・ガイドライン (PDF)

  ・提出された意見の概要及びそれに対する協議会の考え方 (PDF)

後者の文書にある「質疑応答集」から、一部抜粋します。


<Q>

"発信者=回線契約者" として、個人情報を開示するわけだが、それで構わないのか。司法の捜査を経ずに、個人情報を開示できるようガイドラインを作るわけだが、インターネット黎明期のアナログ回線+ダイヤルアップ接続ならいざ知らず、現在のブロードバンド下では様々な接続形態が存在し、安易に回線契約者=権利侵犯者と決め付け情報開示できる仕組みを作ることは非常に危険である。「発信者に対して意見聴取を行わないでよいこととする」は極めて危険である。【複数より意見あり】
<A>

ガイドラインでは、プロバイダは原則として発信者に対して発信者情報を開示するかどうかについて意見を聴取することとされており、発信者の権利を不当に侵害しないよう慎重に判断することが求められるほか、照会を受けた者が権利侵害情報の発信ではないことを窺わせるような事情のある場合には、開示を行うことはできないものと考えられます。(引用者注:答えになっているのだろうか?)


<Q>

ガイドラインが適正に運用されているかを監視するのはどこか。

<A>
ガイドラインの運用状況に問題のあった場合には、「プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会」において何らかの対応をしていく予定です。(引用者注:内部監査だけ?)


<Q>

自称被害者が受け取った個人情報がきちんと管理されるかどうかの保証はどこにあるのか。【複数より】
<A>

法により、発信者情報の開示を受けた者は、開示された情報を用いて不当に発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならないとされているほか、開示された情報が悪用され、損害を被った場合には、発信者は請求者に対して損害賠償請求を提起することができます。
 また、請求者が開示された個人情報を悪用し犯罪を犯した場合には、請求者は刑事責任を問われる可能性があります。(引用者注: 「可能性があります」だそうだ)
 これらは、裁判所の判断を経て発信者情報が開示された場合も同様です。

このガイドラインに反対します。


<Q>

個人情報保護法では、本人同意無しの第三者提供を禁止している。【複数より】
<A>

個人情報保護法第23条第1項第1号において、法令に基づく場合には本人の同意なく第三者に個人情報を提供できる旨規定されており、法第4条第1項に基づく発信者情報開示請求に応じて個人情報を提供することは、同号の除外事由に当たるものと考えられます。


最後は、この質疑応答↓で締めています(!)

<Q>

情報公開はいい事だと思います。個人が情報公開を求める事が簡単にできる様であれば、掲示板などへの変な書き込みが減ると思う
ただ、何でも簡単に公開し過ぎる事には問題があるだろうから、身元確認や、公開できる条件に該当するのかという事の判断を慎重にする必要はあると思う
<A>

ガイドラインに賛成のご意見として承ります(引用者驚愕!!)


セットで運用してネットの気骨を小骨まで抜いてしまおうという信念すらありそうです(妄想???)。


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今日はこんな石原発言を東京新聞紙面で読みました。



2007/2/27 東京新聞朝刊社会面 「警察にヒステリックな人」 石原都知事 浅野氏の印象を語る

 四月の東京都知事選で前宮城県知事の浅野史郎氏の出馬が取りざたされていることについて、石原慎太郎都知事は二十六日、記者団に「なんで宮城の人が東京に来るのか、分からんね」ち語った。
 石原知事は、浅野氏と全国知事会で同席した際の印象を「警察にはものすごいヒステリックだね、あの人。トラウマ(心的外傷)でもあるのかと思った。びっくりするくらい」と語った。
 浅野氏が宮城県警の報債費関連文書の開示をめぐり同県警と対立した当時のことを振り返ったとみられる。
 浅野氏が一度は民主党に出馬辞退の意向を伝えたことについて感想を求められると「美濃部(亮吉・元都知事さんだって一回は『辞めます』と言ったんだから」と述べた。
 建築家の黒川紀章氏の出馬表明には「百花繚乱(りょうらん)」とだけ話した。


浅野氏と県警との摩擦のことを穿り出しているのだろうけれど、そんな勝手な心理学的考察を入れられるのは、家族だってきっとごめんでしょう。


立候補者同士の最低限の大人としてのリスペクトがない首長。

74歳にしてこんな自己正当性の認識や無誤謬性を保って生きてこられたほうが、よほどどんな心理的背景があるのか分析したくいくらいだけど、まあわたしも彼と同じフィールドで戦うのはごめんなので、舌の根の乾かぬうちに前言は撤回します。

ええ、石原分析したくなんかありませんとも。


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