天沢夏月『17歳のラリー』角川文庫を読了。

 都立高校の硬式テニス部が舞台なのだけれど、その中にひとり、まったくレベルの違う人間がいて、3年生の夏にプロをめざしてアメリカに渡ることが決まる。まわりにいた部員たちは、それぞれがさまざまに動揺し、心が揺れ動く。本書は、そのひとりひとりをメインにおいた連作短編の体裁をとった青春小説で、ひとりまたひとりとそれぞれが抱えていた心の葛藤を乗り越えていく様子を描く。プロをめざすほどのレベルの少年がなんで都立高校のテニス部に入ったのか、その少年がそのテニス部で何を得たのかが明らかになっていくあたりは、なかなか感動的。
 天沢夏月のテニス小説というと、やはり『DOUBLES!!(全5巻)』が代表作ということになるのだろうけれど、本書も悪くはないぞ。最新作の『ヨンケイ!!』は400メートルリレーを題材にした小説らしいので、こちらも読まなければ。