NETFLIXの「ボクらを作った映画たち」で今度は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の誕生秘話を観る。


 この有名な大ヒット映画に誕生秘話なんかあるのかと思いきや、いろいろとあるので笑ってしまう。
 監督のロバート・ゼメキスと脚本のボブ・ゲイルは、スピルバーグ初の失敗作『1941』の脚本を書き、『抱きしめたい』『ユーズド・カー』と連敗記録を更新。誰もゼメキスに期待しなくなり、誰も期待していない企画が彼にまわされる。その作品のタイトルが『ロマンシング・ストーン』で、これがヒットしてしまうのだから、世の中分からない。
 そこで、コロンビアピクチャーズのフランク・ブライスに長年暖めていた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の企画を提出するが、企画が動き出す前にフランク・ブライスが姿を消してしまい、企画がストップ。ここまでかと思ったら、なんとこのフランク・ブライス、ユニバーサルの社長となっていて、ユニバーサルで企画が動き出すことになる。
 ところが、そこに現れたプロデューサーのシャインバーグは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』というタイトルに難色を示し、『冥王星から来た宇宙人』に変更することを要請してくる。おいおい。スピルバーグの機転でなんとかそのタイトルだけは避けられたものの、今度はシャインバーグのゴリオシで主役は『マスク』のエリック・ストルツに決まってしまう。マイケル・J・フォックスではなかったのだ。
 かくしてエリック・ストルツ主演で撮影が始まるのだけれど、シリアスなキャラを得意とするエリック・ストルツではどうしても作品の雰囲気に合わず1ヶ月半撮影してから主役がマイケル・J・フォックスに交代。しかも、主人公のガールフレンド役の女優がマイケルより背が高かったので、彼女も交代することに。1ヶ月半撮ったところで、メインキャストが2名も交代となって、全部撮り直しで現場は大パニック。なにせ、公開日まで時間がないのだ。
 さらには、マイケル・J・フォックスがテレビドラマ『ファミリー・タイズ』との掛け持ちであったため、昼はマイケルの出ないシーンを撮影し、夜にマイケルの出るシーンを撮影するというような状況になり、またしても現場は大混乱。そして、ここに来て公開日が前倒しに変更されるというとんでもない事態に。
 というような、作品の完成度からは信じられないような修羅場の中で撮られた映画だったのである。他にもあれこれ面白いネタが満載で、この「ボクらを作った映画たち」という番組、なかなか侮れない。