<ブランコ作業の法制化>
 
 厚生労働省では、ロープで労働者の身体を保持してビルの外装清掃やのり面保護工事などを行う、いわゆる「ロープ高所作業」について、労働安全衛生規則及び安全衛生特別教育規程の改正を行いました。
 
 改正労働安全衛生規則は、平成28年1月1日(一部平成2871)に施行され、改正安全衛生特別教育規程は、平成2871日から施行されています。
弊社でも平成28年の6月末日までに、「ロープ高所作業」の特別教育を修了しています。
 
 ビルの高所窓ガラス清掃を行っていると、「危険な作業だから資格が必要でしょう?」と聞かれ、「何もないのですよ」と答えて、その都度「何もないんですか?」と驚かれていたので、ブランコ作業の法制化は望ましいものだと考えています。
しかしながら平成28年~30年にかけて窓ガラス清掃中の労災事故が相次いでいます。ロープ高所作業(所謂ブランコ作業)の事故も一部を占めています。ロープ高所作業が法制化されたにも関わらず、業界の労災事故が継続して起こっていることは、我々にとって大変大きな問題だと思います。
 
平成28年1月1日から施工されたロープ高所作業における危険防止の為の規定にはその他を含めて8種類あります。

1.    ライフラインの設置
2.    メインロープの強度等
3.    調査及び記録
4.    作業計画
5.    作業指揮者
6.    安全帯・保護帽
7.    作業開始前点検
8.    その他
 
注目すべきは3と4です。
まず3から見ていきましょう。
 
<調査及び記録(安衛則第539条の4)>
「事業者はロープ高所作業を行うときは、墜落または物体の落下による労働者の危険を防止するため、あらかじめ作業を行う場所について、次の事項を調査し、その結果を記録しておかなければならない。」
 一作業箇所とその下方の状況
 二メインロープとライフラインを緊結するためのそれぞれの支持物の位置、
  状態、それらの周囲の状況
 三作業箇所と前号の支持物に通じる通路の状況
 四切断のおそれのある箇所の有無とその位置や状態
 
これらはそれぞれ以下のような意味合いになります。
(一)安全に作業が可能か?ロープで下降した時に安全な場所に着地できるか?
(二)ロープを緊結し荷重が掛かっても安全な丸環や構造鉄骨などの支持物
   があるか?それらは正しく機能するか?
(三)ロープを丸環などに緊結する際に、安全に動作ができるか?またそこを
   行き来する動線は安全か?
(四)建物外壁面にロープを切断する突起物や鋭利な箇所はないか?
 
<弊社では以下のように対応します>
 
『一』  ロープで降下し着地する箇所が公道の場合は、所轄の警察署から道路
   使用許可を取得したり、地上保安要員の配備が必要となります。
   公道であっても簡単なバリケードの設置で済ます傾向がありますが、
   弊社では道路使用許可申請を推奨し、地上保安要員を配備します。
『二』  丸環や構造鉄骨などの支持物が無い場合は、丸環の打設、パラペットク
   ランプ及びリギングの使用などの提案を行います。堅固でない空調機の
   架台や手摺などをロープの吊元に選定することはありません。
『三』  堅固な支持物があっても安全に緊結作業ができない場合は、フェンス
   の移設や昇降設備の設置などを提案し、安全な作業空間の確保をめざし
   ます。
『四』  危険な突起物や鋭利な箇所があれば、その建物に合わせた専用養生を
   作成しロープの切断などを防ぎます。
 
つまり「規定」では「調査し記録する」となっていますが、実際にはそれだけでは済まずに様々な改善対応策が必要となります。しかしながら現実としては、デザイン優先または屋上設備優先で作られた出来上がったビルに行って、四苦八苦しながらなるべく安全な作業方法を見つけて清掃作業することになるのが実情です。
従って「法制化」されて「調査と記録」が義務付けられても、それだけではなにも改善されず、調査結果に基づいて堅固な支持物の確認や作業動線の安全確保をビルオーナーや管理会社と進めなくては意味がありません。

次に4の作業計画ですが、こちらは次回のブログでご紹介いたします。




東京外装メンテナンス協同組合
                                          (投稿者 T.H)

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