アルミパネル(複合皮膜)の汚損修復 その3
~アルミネタ最終章~
 
皆さま、お久しぶりです。またもや2か月ぶりですね!
このブログは輪番制で書いているから、順番が回ってくるのが2か月に1回くらいなのです。ちょっとインターバル長すぎ…(笑)?
昨年82日に初めてアップした内容は、汚水回収システム、そして1013日と1222日のブログでは、アルミパネルについてお話ししましたが、ここまできて、何を書くべきか?やっと軸が定まってきたというか、首が座った?というか??根を張った???なにしろ、やはり、当分は外壁の洗浄ネタに絞っていこうと思っています。
で、今回もアルミ!!アルミはこれで最後にしますね(^^)。
 
 というわけで、“洗浄”なのですが…、たとえば、襟が黄ばんでしまったYシャツをムリに黄ばみを落とそうとして洗浄力の強い洗浄剤や、はたまた漂白剤で洗うと…、きれいにはなるけどYシャツの繊維は傷むでしょ!襟がボロボロになったりして、
それと同じで、外壁を傷めて良いのであれば、汚れを落とすことは簡単なのだけど、傷めてしまったらNO GOODなわけで、いかに傷めずに汚染物質だけを取り除いて建材の性能や美観を回復するか、といったことがテーマになるわけです。
外壁をYシャツみたいにボロボロにしたら取り返しがつきませんものねッ!
だから洗浄はいつも危険な領域に踏み込まないよう洗浄剤の選定や処方箋の策定も安全領域で行えるように計画を立てるのだけど、汚れが落ちないと顧客満足はままならないし、といって落としたら外壁が傷んでしまうし…、
つまり安全領域と危険領域との臨界で戦う洗浄技術というわけなのです。だからそこはまさに戦場なのです!!
TECのテクニカルスタッフはいつも現場で真剣に洗浄に向き合っているのです。
  
損傷事例
アルミパネル(複合皮膜)の損傷事例である。
洗浄法のミスによる人為的損傷と推測される。
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この事例は、単なる拭きムラではないのです。昨年の1013日にアップした症状と似てはいますが、そんな甘いものではないのです!
 
昨年1013日アップしたアルミパネルの画像
一見似ているようであるが、これは有機汚染物が落ちきれずに発生した拭きムラである。
幸運なことにアルミの表面処理は強度劣化を呈していない、従い、適正洗浄剤による洗浄と洗浄後に表面保護剤による処理を行う事で、改善する。
 
 
 
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で…、
どうしてこのような事故が発生するかというと、洗浄剤の選定ミスであったり、洗浄力を高めるために比較的高硬度で粒度の大きい砥粒を選定した研磨行為があったとき、このような状態を呈してしまうのです。
そしてその爪痕は複合皮膜のクリア層のみならずその下地となる陽極酸化皮膜層まで達してしまい、深く傷つけてしまう。そうなると、もう元には戻りません。
では、洗浄事故を未然に防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか?
少なくとも、洗浄計画を立案する前に建物のメンテナンス履歴収集や事前の状況調査、テスト洗浄等が重要となります。
TECでは次のように洗浄計画を進めます!
 
先日行った、TECメンバーのテスト洗浄報告です。
 
テスト洗浄事例
 
建物概要:
竣工後26年が経過した都心のビル
症状:油分等の有機汚染とあわせ、無機質成分による水滴状白色の劣化層が確認される。
建物オーナーさま、管理会社さま立会いのもとテスト洗浄を行う。
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テストⅠ
対称面をマスキングテープで分割して3種類の洗浄剤によるテストを行う。
向かって右から中性二相、酸性(A)、酸性(B)を塗布し、状況を確認する。
 
評価:  
中性二相→有機質の汚染はほぼ除去されるも白色劣化層は変化なし
酸性(A)→有機質の汚染はほぼ除去されるも白色劣化層は変化なし
(洗浄中、わずかながらケミカル反応による金属臭が発生する。)
酸性(B)→有機質の汚染は完全に除去され、白色劣化層も若干溶解、しかしアルミ表面が本来の色調よりも白味をおびた状態となる。
(洗浄中、ケミカル反応による金属臭が発生する。)
 
判定:
中性二相→良好
酸性(A)→良好
酸性(B)→不良
 
テスト部位の表面保護処理
洗浄後3分割した部位をさらに2分の1にマスキングテープで区切り、表面保護剤を塗布する。
   
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マスキングテープを剥がした状態。
表面硬化後、触指と見え方評価を行う。
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見え方評価:
中性二相+表面保護処理→白色劣化層はコートされ良好。
     酸性(A)+表面保護処理→白色劣化層はコートされ良好。
酸性(B)+表面保護処理→白色劣化層はコートされ良好。ただし、アルミ表面が本来の色調よりも白味を帯び、明度が上がりすぎている。
 
※表面保護処理って必要なの??とよく言われますが、洗浄後にコートすることで表面処理層を守り、劣化進行速度を遅らせるためにも有効なのです。ましてアルミパネルのように平滑な建材は均一な見え方評価が重要です。そのためにはコートして光沢を付与して均一性を高めることにも有効です。
だから、アルミ建材に関しては例外を除いて洗浄と表面保護処理がセットなのです。
 
コート(coat)って辞書をひくと、外套とか、オーバーとか、マントとかって書いてあるのだけれど、なるほど~と感心してしまいます。
僕らは洗浄後に表面保護処理としてコーティングを施すことで、建物が体を壊さないように外套を羽織らせているのだなぁ~、と感慨に耽ったりしています。
  
テストⅠの総合評価:
現段階では中性二相+表面保護処理ならびに酸性(A)+表面保護処理が有効と評価した。
であれば、反応臭が全くない中性二相+表面保護処理を選択することが賢明と判断し、さらなるテストを行う。
  
テストⅡ
テストⅠのデータをもとに別の部位で広範囲にテストを行う。
中央より左側が
中性二相洗浄剤+表面保護処理を行った部位
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テストⅡ後の総合結果:
当該建物のアルミパネルは中性二相洗浄剤+表面保護処理による洗浄で、充分な評価レベルであること、できる限りアルミ建材に悪影響を及ぼさないためにも酸性洗浄剤よりも中性二相洗浄剤を選定することが最良の策であるとの結論に至った。
 
 以上をもちましてめでたく一件落着!実作業のための洗浄法が決定!!
と、思うでしょ???
これでもまだ処方箋は書けないのです。
 
テストⅢ
再度、別部位で同様のテストを繰り返す。
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 ↑まだやってます(笑)!しつこいですね!!
 
お忙しい中、そして木枯らし吹きすさぶなか、長時間立ち会っていただきましたご関係者の皆さま、本当にありがとうございました。
だけど、
建物オーナーさま、建物管理会社の方々と僕らが三つ巴になって相互に意見を交わし、お客様の評価をもとに処方を策定、実作業に反映する。
僕ら実施者だけでは、より良い洗浄作業は完結できないのです。
お客さまにも一緒に関わってもらい、ご意見を頂きます!モンクも頂く!
何故一緒なの???
だって、お客さまにも僕らにも、共通しているのは“建物の延命”でしょ?
それがTECヤリカタなのです!!
 
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 適正処方による洗浄例
  
さて、今回もアルミネタで失礼をしました。アルミは今回で最後にしますね。お付き合いありがとうございました。
次回からはタイルやガラス、SUSと建材毎に分類してお話を進めようと思っています。ご意見ご質問などありましたらドシドシ送ってくださいね!お待ちしております!これからもお付き合いをよろしくお願いします。
(投稿者M.H)
 東京外装メンテナンス協同組合
        http://garakuri.com/