三相インバータを単相で使うのってどうよ? | GARAGE_komatech

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三相モータをインバータに単相入力して使用することについて情報が錯綜しているように思うので整理しましょう。

 

結論から言うと

 

単相200V入力でインバータを使用する場合は二回り位大きいインバータを使う。

 

間違い

 

正しくは

 

○三相200V入力型インバータ

無理やり単相200Vを入力して使用する場合は二回り位大きいインバータを使う。

 

○単相200V入力型インバータ

単相200Vを入力して使用する場合は適用モータそのまま使ってOK。

 

正解です。

 

とはいえ、三相200V入力型インバータで単相入力でも使えるのは、インバータの適用モータよりも軽負荷(モータの定格容量ではなく、実負荷)の場合に、事故等で急に欠相した状態でも軽負荷なら運転を継続できるというものです。

異常だからと急に止めると問題が起こる場合の救済であって、常用での使用を目的としていません。

 

個人のDIYだからOK?

中古だと安い?

いやいや、興味本意のテストで試すならともかく常用するのであれば単相200V入力型インバータを使いましょう。

それが大人ってもんです。

 

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以下、検証していきます。

 

!注意!

数字についてはイメージ的な分かりやすさを優先しています。

波高値等のモロモロは無視していますので数字を鵜呑みにすると恥ずかしいことになります(=A=)

 

まずは製品的に「三相モータ駆動用インバータ」と呼ばれているものの簡易的な内部回路図です。

 

「三相電源入力」→「コンバータ」→「平滑回路」→「インバータ」→「モータ」

という構成になります。

 

入力された三相交流電源をコンバータで脈動直流に変換して平滑回路で直流にならしたら、インバータは三相直流として出力して三相モータを駆動します。

 

ちと、ややこしいですが三相から直流を生成して、その直流を三相直流としてパルス状に出力することで、インバータの主目的である可変周波数制御等ができるようになります。

 

まずは「コンバータ」の入出力電圧を見ていきます。

①コンバータ入力電圧

(普通の三相交流電圧ですネ)

②次にコンバータで三相全波整流したイメージ

③コンバータ出力の直流電圧

すこし拡大します。

このままでも使えそうですが目指すは電池のような真ッ平らな電圧です。

この状態で最大200V、最小173V、平均190Vです。

最大最小の幅の限度は5%とすると直流の電源としては失格です。

 

そこで平滑回路でコンデンサを使用して波を平滑します。

この状態で最大200V、最小195V、平均197V

だいぶ平らになりましたね。このレベルになれば使い物になります。

 

さてここで入力電流について注目します。

まずはコンデンサで平滑しない場合の入力電流です。

平滑しないと使えないのはそのとおりですがこういう波形になります。

まー、ヘンテコナ電流グラフになりますね。

(普通は電流波形は電圧波形と同じ形になります)

 

これをコンデンサ平滑かけると

電圧をコンデンサで平滑すると入力電流はこんな波形になります。

短時間でコンデンサに急激に充電すべく電流を流して、あとの電力供給はコンデンサにお任せです。

1相1サイクルでピークが4回立ちます。

 

三相分のグラフを見ると1サイクル=50Hzで0.02秒で6回コンデンサに充電・放電されるサイクルになります。

大体、コンデンサは充電-充電間で0.003秒の間隔になります。

その電力は2相で分担する形になります。

 

さて、ここから本題に移ります。

この三相入力インバータに単相200Vを入力するとどうなるでしょうか。

 

これが三相インバータに単相入力した場合の回路図で、T相には何も接続されないので無いものとして扱います。

これは「単相200V入力型インバータ」と同じ回路図になります。

 

まず、コンバータで整流した波形は

このままではまったく使い物になりません。

平均電圧でも120Vくらい。最小がゼロになってしまいます。

 

これをコンデンサで平滑してみます。

だいぶましになりましたがこれでも使い物になりません。

最大200V、最低184Vです。

 

この状態での入力電流を確認してみます。

1サイクル=50Hzで0.02秒で2回コンデンサに充電・放電されるサイクルになります。

ということはコンデンサは充電-充電間で0.01秒の間隔になります。

三相入力に比べて3倍になりますネ。

 

放電時間が長いということはその分電圧が下がりますので平滑しきれないということですね。

さらに、コンデンサにチャージするのに三相での3回分を1回で充電する必要があるのでチャージ一回あたりの入力電流が大きくなります。

 

それでは、これらを踏まえてインバータの仕様を確認しましょう。

 

〇許容入力電流

 三相200V入力型2.2kW  ⇒ 13.2A

 三相200V入力型3.7kW  ⇒ 22.2A

 三相200V入力型5.5kW  ⇒ 31.5A

 三相200V入力型7.5kW  ⇒ 42.7A

 

○三相200V入力+2.2kwモータ

 入力電流13.2A

○単相200V入力+2.2kwモータ

 入力電流24A

 

モータをインバータを介して制御すると入力相数に応じてインバータの入力電流が決まります。

インバータの適用モータは「その入力電流に回路が耐えられるか、整流しきれるか」どうかだけで機能に差異はありません。

 

単相200V入力して2.2kWのモータを駆動した場合の入力電流は24.0Aになるので、それに耐えられるインバータは5.5kWもしくは7.5kWとなります。

 

次に電圧波形の最大最小の差です。

これは単純にコンデンサ容量を3回分の充電が出来る、3倍の容量にすれば解決するでしょうから

2.2kW×3=6.6kW

となれば7.5kWのインバータならOK、もともと余裕を持った設計に

なっているはずなので5.5kWのインバータの内臓のコンデンサでもいけるか?

といったところでしょう。

 

これがまことしやかに語られる

 

「単相200V入力でインバータを使用する場合は二回り位大きいインバータを使う」

 

という内容の正体です。

「三相200V入力型インバータにおいて」という言葉が抜けたものが一人歩きしてしまったのでしょうね。

 

三相200V入力型のインバータに単相200Vを入力して使う場合、インバータの仕様をよく確認してから購入してください。

三相の内2相を欠くわけで、当たり前ですが異常停止する条件になります。

その異常検知機能をOFFにする必要がありますが、そもそも異常なのでOFFに出来ない機種もあります。

そのほか、必要な保護装置が働かない場合もありますのでご注意を。