ポルシェのホイールナットで驚いた話と言うと、車に詳しい方やポルシェをご自分で整備しているオーナーさんなら、
「あぁ、あのことでしょ」
と思われることでしょう。
昔ミツワ自動車の広告に、
お客さんにポルシェのホイールナットを1個持ってもらい、そのあまりの軽さに驚いた云々・・・
という話がありました。
ポルシェのホイールナットは軽量化の為アルミ合金製なのです。
それもずいぶん昔から。
今回入手以来初めて944のタイヤ交換をしました。
それで噂のホイールナットを持ってみて、確かに軽いと思いました。
けれど、このところベンツばかり触っていたので、
「ホイールボルトじゃなくてナットか!」
とそこに違和感を覚えたのでした。
いやいや今ホイールナットの話って自分で言ったじゃん。
って言われると思いますが、近年の輸入車ってホイールボルト方式が定番なんですよ。
で、驚いた部分というのは実は別のところで、って言うかこのナットのことに違いないのですが、その規格にびっくりしたのです。
アルミ合金製のナットって、着脱するごとにどうしても溝がすり減る可能性があると思うんです。
一概に他社製品をポルシェ品質と比べてはいけないけれど、国産車用の社外アルミ合金ホイールナットをいくつか使ったことがありますが、とにかく柔らかくもろい印象しかありません。
以前とりあえず4輪分交換したものの、その締めている感触から不安になり1mmも走りださずにもう一度外してスチールナットに戻したことがありました。
外したナットの溝を見るとやはりすり減っているのがわかりました。
ちなみに、ポルシェの名誉のため誤解の無いように言っておきますが、今回のポルシェのナットは固着気味のものを外す際も、締めていく時も違和感は感じませんでした。
スチール製と同じ硬い印象です。
外す際にもしやチタン製かと思ったくらいです。
でね。
そうは言いつつも1989年式944の純正アルミナットは、確実に何度か着脱を繰り返しているはずなので目視できずとも少なからず摩耗があるはずで、アルミ合金自体の腐食などもあるのではないかと気になりました。
余談ですが、僕もアルミ合金製の商品を扱っておりまして、それは屋外で使っているので必ず腐食していきます。
腐食といってもアルミの場合鉄さびのように赤っぽくなるのではなく、白っぽくなって穴が開きます。
で、その商品が製造中止になった際に、メーカーの在庫をすべて買い取りました。
日本中でいや世界中で新品を出せるのはうちだけです。(在庫がまだある同業者を除く)
話を戻します。
アルミ合金のもろさを知っているものとして、ポルシェクオリティーといえどもやはり経年変化(劣化)や摩耗、あるいはオーバートルクや斜めがけによる亀裂や破損の心配というのはいつでもあるわけです。
で、まず同じものが無いか探しました。
純正品、もちろんありました。
ややリーズナブルなOEM元?の商品もありました。
さらに他の商品は無いのか。
とりあえずこのナットの規格を調べました。
そう、ここが驚いたポイントだったのです。(本題までが長いよ)
で、このナットの規格ね。
M14 1.5 R14 19HEX
M14の1.5で14の球面座ならベンツと一緒じゃないか?
と思ったのもつかの間、それはホイールボルトです。
何度も言いますが944はホイールナット。
で、貫通していない袋ナット。
これがね、本当に無いんだよ。
スチール製の同形状のものはありました。
特注少量生産でチタン製というのもありました。
貫通ナットもありました。
僕が欲しいのは、アルミ製のアルマイトカラーの袋ナット。
できればブルー。
無いのよ。
でも方法はありました。
それは60度テーパー座のホイールナットの先端に14Rの球面座に変換できるアダプターを取り付けること。
ですが、944のハブボルト、ホイールから出ている長さってそれほど長くはありません。
そこにワッシャー上のアダプターを挟み込むとなると、ネジ山のかかる長さがかなり短くなります。
これまで通り車検を取らず走行せず、1/1ディスプレーモデルとして飾っておくならそれでもいいと思います。
ホイールボルトならばむしろその先端が別部品という商品は多く出ていますし、ボルト自体の長さでネジ山のかかり具合を調整できます。
これ、ハブボルトにホイールナットだからさ。
しかも60度テーパーのアルマイト製のナットとアダプターを買うと、社外品のポルシェ用のナットの最安値を超える価格となってしまいます。
余計なお金を出して不安を買うのも愚かな行為です。
そしてもう一つ付け足しておきますが、そもそもこのハブナットはアルミ製のホイールナットを使うことを考えて設計製造されています。
摩擦による摩耗具合とか、異なる金属が長期間接触することによる電位差から生じる腐食の問題とか、温度差による膨張と収縮の問題とか、とにかくそういうことも全て考えられたうえで組み合わされています。
これはポルシェ以外の車もすべてそうです。
チューニングや改造をするとそれはすべてメーカーの意図していないことになる訳で、丈夫だからいいとかより性能が高いからいいってことじゃなくとにかくバランスが狂う訳です。
先ほどお話しした、アルミ合金製の商品ですが、同じ形状でアルミ合金製、ステンレス製、そしてプラスチック製、あるいは特殊な銅製などいくつかの素材で作られた商品があります。
で、ちょうどネジ山に差し込む着脱式の構造なのでこのホイールボルト&ナットと同じ関係ですね。
合金製の溝にねじ込む合金製のネジ山を持つ商品が腐食して穴が開いたからと交換用にプラスチック製を買っていくと、アルミよりプラスチックの方が柔らかいため、新品であっても脱着するごとにネジ山が摩耗しやすいと考えます。
逆に硬いステンレス製を組み合わせると今度は合金製の溝の方が減っていく。
溝の方は固定してあるためそちらがすり減ると交換する手間がかかってしまいます。
さらに金属製品は接触していると電位差により弱い方がどんどん腐食する。
だから正解は同じ合金製のものを組み合わせることなのですが、それとて何度も使って溝が減ってきているところに新品のエッジが出ているネジ山製品を取り付けていけば、少なからず経年変化で腐食している溝の方が摩擦でこれまでよりも摩耗していくスピードが速いものと考えます。
で、その溝を使わずそこに同じ溝が付いた一回り大きなステンレス製の商品を被せて使うステンレス製の補修用の商品っていうのがあるのです。
かなり余計な話になってしまいましたね。
ちなみにこの話はタイヤのエアバルブキャップの話でも似たようなことを書きました。
エアバルブは素材の違いや重さ、さらには耐熱性や使用できるスピードレンジなどもあるのであんな小さなものでもっと深刻なのです。
ポルシェのナットの話に戻します。
選択肢を広げようとするならば、ハブボルト自体を新品の長いものに打ち換えるという事もできますね。
僕もそれ以前一度だけやりました。
A32型セフィーロをIMPUL432S仕様にしてホイールを履き替える際に、ネジ山のかかりが浅かったのでNISMOのロングハブボルトに交換したことがありました。
それならば安心です。
まぁどのみちすぐには走らないのだから、純正のアルミ製ナットを使っていても何ら問題は無いのでそんなに考えることも無いのですが・・・