コメントをいただいたのでこの話を少し広げます。

 

その昔、新車にディーラーオプションで取り付けたカーオーディオのスピーカー配線が、ガムテープでべたべたと乱雑に留められていたという件です。

 

僕には、そうなってしまった理由というのも少しわかりました。

 

僕の勤めていた国産車ディーラーが取り扱っていたメーカーは、正直同時期の他社と比べてカーステレオの音質が良くない印象を持っていました。

 

昔、観光バスに乗るとバスガイドさんがマイクで語りながら時に歌を歌ってくれたり、カセットテープで音楽を流したり、あるいはVHSビデオを観せてくれたりしたものですが、その音質は褒められたものではありませんでした。

 

その天井についていたスピーカーやアンプなどの音響設備を作成していたメーカーさんが、僕の販売していた国産車に純正採用されていまして、音質がバス並みだったのです。

 

当時僕は自分の購入した新車に、BOSEサウンドシステムとソニーのCDチェンジャーをメーカーオプションで注文したことがあるのですが、15万円したBOSEサウンドシステムの音質はぐちゃぐちゃでした。(CDチェンジャーと合計すると25万円以上のセットでした)

 

なんのことはない結局のところスピーカーはBOSE/ボーズでしたが、アンプやデッキ類は観光バス採用メーカーのものだったのです。

 

この車種のBOSEについては、リアゲートの真下にスピーカーを配置していたメーカーの設計にも問題がありましたが。

 

で、メーカーも自社のカーオーディオのことは気にしていたようで、ある時期カーオーディオに力を入れることにしたのです。

 

それは市販カーオーディオとして評判のいい二つのメーカーと、さらには純正採用されていたメーカーもその機会に高級オーディオブランドを立ち上げ、合計三つのメーカーからディーラーオプションでオーディオの装着を選べるようになったのです。

 

それがNフイ〇トシリーズです。

 

で、先日お話しした若いお客様が高い車を頑張って買ってくださったのがちょうどそのオーディオを選べるようになった時期であり、ディーラー内の新車整備工場としてもその作業はほとんど経験が無かったものと考えられるのです。

 

ちなみに、あらためて説明しますが、メーカーオプションとはメーカー工場で車両製造時に同時に取り付けられるオプションのことで、例えばサンルーフとかリアワイパーとかがあります。

 

それに対してディーラーオプションとは、新車工場から出荷した車をディーラーの新車整備工場に持ってきてそこで取り付けるものであり、例えばシートカバーとかがあげられます。

 

ナビゲーションシステムやカーオーディオはメーカーオプションでの取り付けや、或いはレスオプションも選べたり、ディーラーオプションでも取り付けられるものもあったりして選択肢は多岐にわたります。

 

さて。

 

で、社外オーディオメーカーの取り付け作業はほとんど経験が無かったと思われる新車整備工場でしたが、国家資格の整備士がやっているのですから、もちろん技術はあったはずです。

 

では何が無かったのか。

 

それは配線を束ねるためのタイラップ(結束バンド)や配線を隠す資材や、トレイに固定する金具類。

 

これは知り合いから聞いた話ですが、カー用品量販店さんは、ネジや金具の卸業者さんから、そういった取付金具やネジ類を購入してお客さんの車の取り付けに使っているそうです。

 

もちろんそういうものは小分けの袋に入れて自店舗で販売もしているわけですが、大量に使う場合は、業務用のものを卸売業者さんから仕入れた方が安いそうです。

 

カー用品量販店さんのカーオーディオの取り付け料にはそういう金具やネジや資材類の金額も含まれていて個別に請求はされませんよね。

 

で、僕の勤めていたディーラーにもそのカー用品量販店さんに卸していたネジ屋さんが出入りしてはいました。

 

けれど社外オーディオを導入する際にそういうものの準備をしていなかったのだと思います。

 

だから担当した整備士も仕方なく、あるもので取り付けをせざるを得ず、ガムテープ留めになってしまったのでしょう。

 

もしかしたら、取り付け現場でも僕と同じようなことがあったかもしれません。

 

整備士は当然、「取り付けにはあれとそれが必要です」と上司に報告したでしょう。

 

けれど、そんな予算も取っていないし、そのためには会議や稟議を通してってことが必要になる。

 

だから「それは今後の課題とするから、今はあるものでやって欲しい」と言われたのか、もしくは僕同様に「ガムテープで留めて何の問題があるんだ!」と一喝されてしまったのかもしれません。

 

どちらにせよ標準取り付け費用を含めて請求しているのですから、標準以下と思われる取り付け方にはお客さんからクレームを入れてもらうのが良かったでしょう。

 

僕も正直に「これはひどい取り付け方ですよ」とお客さんにはっきりと伝えて、「このことをメーカーのお客様相談室に電話してください」と言っておけば、良い結果にできたかもしれません。

 

考え不足だったなと今思いました。

 

恐らくその当時僕の勤めていた会社で買った新車のオーディオは、そういう取付をされているものが他にもあったかと推測できます。

 

もちろん今はそんなことは改善されて、『間違いのないプロの仕事だ』と思われるような取り付け方になっているものと期待を込めてこの話を終わります。