モータージャーナリストやマスコミ向けに行われる新型車の試乗会があります。
素人の僕は当然参加したことはありません。
ちなみに車屋でもありませんから。
ディーラー勤めのころ一般向けではない試乗会としてもう一つよく聞く試乗会がありました。
それは、各ディーラーの幹部だけ招待して行われる試乗会。
内覧会といった方がいいのかもしれませんが、ただ見るだけの内覧会というものもあるのであえて試乗会と書きます。
試乗会に参加出来人は社長や役員、部長クラスまでです。
もちろん会社が言えば参加できるのでしょうが、僕のいた会社ではどれだけ優秀でも営業マンは参加していませんでしたね。
でね。
その試乗会はサーキットで行われたらしいのですが、そこに行った御大方、次々に早く自分の番が来ないかとそわそわして、あっという間に乗り込んだと思ったら、みんなフル加速していったそうです。
で、メーカーの方がびっくりして
「お宅はスピード狂の人ばかりなんですね」
と言ったとか。
恥ずかしい話です。
ファミリーカーでサーキットを走っての限界性能を知るということも、必要なのかもしれません。
けれど役員方はサーキットを走ること自体を目的としてしまっており、本来の車の評価ということを忘れてしまっていたとしか思えません。
けれどファミリーカーでサーキットで試乗会を行ったメーカーの側にも疑問を呈します。
僕だったらどこかの教習所内のコースの方が向いていると考えますね。
というのもこんなことがありました。
あるファミリーカーのCMで、かつて日本で一番速いといわれたレーサーの方がサーキットで限界走行をしている映像が延々と流れて終わりというものがありました。
いやいや、確かにNAでのパワーとマニュアルホールド付きの新開発の無段変速ATの組み合わせのグレードはスポーツ走行もいとして造られています。
そう意図して造られていますが、昭和のモータリゼーションのころから名前を引き継ぐファミリーカーなのだから、この内容ではユーザーの心には刺さりません。
僕の勤めていた会社はCS/顧客満足度向上のための取り組みを国内でも最も早く手掛けていた会社で、そんなこともあったためかわかりませんが、組合の執行委員/職場長をしていた僕の上司のもとにはいつも新しいCMについてのアンケートが送られていました。
で、職場長は、その評価を僕にやらせてくれたのです。
早速僕は先日観たCMについての意見を書きました。
さらにあのコンセプトを生かすならもっとここをこうしてこんな風にした方がいいということも。
それからしばらくして新しいCMが流れました。
大体こんな感じだったと記憶しています。↓
テストコース上のぬれた路面/スキッドパッドで、目の立てられたパイロンを避けた急な回避運動と、急停止の映像が流れますます。
次の場面では雨の降る夜に、気が付くと傘を差した小さな女の子が突然目の前を渡っています。
運転手はブレーキを踏みながら回避します。
あぁ、良かった。
女の子も無事で運転者もほっとしています。
そう、これだよ!
このテストが実際の運転の場ではどのような安全につながるのかということ。
それを直感的に訴える映像。
これが必要だったのです。
もちろん、最初のCMを観て僕と同じようなことを思い、似た様な意見をした人がいるのかもしれません。
像が踏んでも壊れないというキャッチコピーの筆箱がありました。
実際に像に踏ませても元に戻るというかなりのインパクトがあるCMを流していました。
普通の人は筆箱を像に踏まれる機会はないでしょう。
けれど普段使いには十分すぎるくらいの耐久性があるのだと誰もがわかるのです。
同じようにいくら限界性能が高くてもファミリーカーでサーキットを走ろうとは普通は考えません。
その機能や性能が自分にとってどれだけ効果をもたらすのかということが大事なんです。
つづく