僕は一時期役者の養成所に通っていました。

 

何人もの講師の方がいらした中で、とても印象に残っている言葉があります。

 

それは、

 

『もの凄く怒っているという表現をせよ』

 

というお題のレッスンの時のことでした。

 

怒りの表現ということで、生徒は皆できる限りの大きな声で叫んでいました。

 

それをご覧になった年配の先生が、

 

「う~ん」

 

「違うんだよねぇ」

 

「怒っているということは大きな声で怒鳴ればそりゃ誰でもわかります」

「そしてそれは誰にでもできます」

 

「求められているのはそういうことではなく」

 

「僕ら役者は、怒りということを怒鳴らずに表現できなければならない」

 

凄く深いお言葉だと思いました。

 

例えば、

 

『内に秘めたる怒り』

 

というものもあります。

 

それ、怒鳴ってしまったら内に秘めてはいないよね。

 

みんなにわかってしまう。

 

あるいは、

 

『怒りに震える』

 

なんて表現もあります。

 

あまりに怒っていてもはや言葉にできないぐらいという状況です。

 

これも大声を出してはいけません。

 

結局僕は役者の世界には行きません(行けません)でしたが、その時のお言葉は常に頭の中にあります。

 

そしてあらゆる場で思い返して考えるのです。

 

『怒り=怒鳴る』

 

のような短絡的思考ではなく、

 

もっと違うやり方があるのではないか。

 

もっと効率の良いやり方があるのではないか。

 

もっと相手の度肝を抜くような殺し文句があるのではないか。

 

僕が今やっている仕事の一つ、セールスマンの仕事というものは、役者に似ていると思います。

 

いかにお客様の求めるような人物像になるか、どうやって最適な商品やサービスをそれが適正な価格と思わせるかを全身を使って表現していくのですから。

 

あるいはそれをトヨタ式に言うと

 

『改善』

 

で表せると思います。

 

「話し方を改善」

 

「自分の服装を改善」

 

「商品を改善」

 

現状に甘んじず今とは違ったアプローチでより良い結果を出す。

 

それは先生の仰っていたことと同じなんだなと思います。