国産車ディーラーで働いていた頃の話です。

リコールで、自分が車を販売したお客さんが営業所に来られました。

車はすぐに工場に上げられたので、すぐさま点検改修作業が始まったものと思っていました。

ところが。

20分ほど経過しても作業が終わっていません。

リコールの手紙では、点検改修作業は15分ほどで終わりますと書いてあるのに、どうなっているんですかと、業を煮やしたお客さんから軽くお怒り気味に言われてしまいました。

直ぐに工場に行き確認すると、お客さんの車は作業が全く手付かずのまま放置されていたのです。

えっ?

どうして。

すぐさま近くにいた工場長に、訊きに行きました。

お客さんからまだですかと言われたのですが、どうしてあの車は作業をしていないのですか?

すると工場長、少し怒り気味に、

しょうがないでしょうが!

インタークーラーギンギンに熱くなってんだからさ。

それとも何?
俺らにF1のメカニックのような耐熱グローブつけてやれって言うの?

ちなみに工場長は普段は穏やかな人です。

僕の言うことがたまたま感に触ったのか知りません。

整備部門トップの上司ですから、強く言ったつもりはありませんし、当たり前のことを言っただけです。

それにしても、そんなこと、知らなかった。

いや、営業マンである僕もお客さんも。

これ、おかしくないですか。
僕が誰かに怒られなければならなかった話ですか?

言い方を変えると誰かが怒らなくても済むようにできたんじゃないかってこと。

そのお客さんの車はターボ付きでインタークーラーがエンジンの上に乗っているタイプ。

リコール箇所のプラグあたりを点検するにはインタークーラーを取り外さなければならなかったのです。

リコール対象でその仕組みになっているのはその車だけです。

それでも例外が1車種でもあるのなら、案内文に15分で終わりますなどと書かずに、15分から1時間と書くか、例外的に1車種だけ1時間かかりますと書くべきではなかったのか。

さらに、僕はお客さんの言葉を変わりに伝えただけでその疑問はお客さん自身の気持ち。

直接お客さんが同じことを訊いた場合にも、工場長はそんな言い方で返すのか?

営業マンはお客さんの代弁者でただの伝え役だ。

車を買いたいとか安くして欲しいとか、整備が遅いとか、営業マン個人が思ったわけではない。

営業マンは無理難題を言うと世間一般では言われているが、それは全てお客さんの声だから。

お客さんから直接言われた言葉であり、自分たちのやるすべての仕事はお客さんのためと考えれば、整備をすることも、カタログを整理するのも、お金を数えるのも、どんな部署のどんな仕事も全部はお客さんのためだと考えれば自分の仕事の取り組みの仕方も変わりませんか?

実は入社して最初の半年の決算のとき、優秀販売員としてメーカーから表彰して頂きました。
実際は会社の推薦によるものですが。

また、台数もバブル崩壊直後入社で、それなのにノルマはバブル期の台数ということで、それほど多い台数ではありませんでしたが。

と、書いてはおきます。
数字はご想像に任せます。

で、その表彰のお陰か、当時銀座にあったメーカーの本社に新人の営業マン代表として呼んでいただき、意見を述べました。

その際、

すべての仕事はお客さんのため。
営業マンの声はお客さんの声。

という話をさせていただき、メーカーの社内報に載せてもらいました。

その後営業所にも取材に来ていただいたのです。

話が膨らみましたが、リコールの待ち時間の記載はメーカーのミスですね。

お客さんの、書いてあることと話が違うと言う意見はごもっとも。

銀座に本社を構える大会社がなんでそんな小さなミスをするのか理解できない。

お客さんのことを考えずに仕事していた人がいるんじゃないかと思うね。

待ち時間の数字を小さくしたいなら、これだけは例外ですと書けばいいだけのこと。

親会社から来たコストカッター氏はそういう所まできっちりしていたんじゃないかな。

ダメな人ダメなところは切り捨てて行く。

日本的義理や人情重視のつながりをやめて本質をついてくる。

異国から来た彼だからできること。

って言うかそんなことが原因で身売りする羽目になったんじゃないのかな。

前にも書いたカタログ請求のふざけた話。

ダメにダメと言えない体制がダメ。

当たり前のことが通らなければお客さんは離れていくよ。

全部昔のことでよその会社だから今の僕には全く関係ないけどね。