日本中が好景気に浮かれ、それがいつまでも続くと思い込んでいたバブルが弾けてまさに水の泡になった頃、僕は国産車ディーラーに就職しました。
当時販売していたU13型ブルーバードは、同じ型のモデルなのに全く違うデザインをした2つの車種(ARX、SSS)が存在するという、バブル時代の贅沢な設計でした。
しかしながら実はその前のU12型のブルーバードもかなり贅沢な内容であることを当時の所長の一言で知ることになりました。
画像はすべて日産ヘリテージコレクションより。
ある日突然新人の僕に所長が質問してきました。
君はU12のハンドルが何種類あったかわかるか?
そう訊いてきたということは予想外に多いと想像できましたので、多めのつもりで、
20種類ぐらいですか?
と答えました。
すると所長がニヤリとして、
40種類もあるんだよ。
と。
これには驚きました。
何でも、グレード、スイッチの有無、そして内装色等を組み合わせるとその数になるのだと言うのです。
そして、
無駄だよね?
って。
確かにそうです。
その作り分けのコストは、車両価格に反映され結局ユーザーが負担することになるのです。
所長のこの一言には大いに考えさせられました。
その後、時代は安全性が重要視されるようになり、すべての車種でサイドインパクトビームやエアバッグなどの安全装備が標準化されましたが、大幅な値上げができないため何らかの工夫をしなければならなかったのです。
マイナーチェンジ時にエアバッグを標準化する代わりに、ネジの頭を隠す蓋が廃止されたり、フルモデルチェンジの際にはクッションパッドで覆われていたダッシュボードがただの硬いプラスチックむき出しに変わったり。
その際にエアバッグ内蔵ハンドルは、全車種共通デザインのものを採用したのです。
だからR33型GT-Rは、武骨なデザインの大径ハンドルなのです。
安全対策が必須となったことでメーカーが無駄に気づき改善しようと考え始めたことは評価すべきことですが、時間がなかったのかわかりませんが全車共通はやり過ぎだったと思います。
更にダッシュボードを硬いものにしたのにも異論があります。
エアバッグがあるから乗員が当たることはないということはありません。
衝突の衝撃が複数回ある場合、2回目以降はエアバッグもしぼんで役に立ちませんし、当時は助手席エアバッグが標準ではありませんでしたから。
話を戻します。
1車種に40種類のハンドルは多すぎですが、だからと言って複数の車種で共通の1つというのは逆に少なすぎでした。
ちなみに当時はブルーバードの販売店でスカイラインは扱っていません。