その日、西田にテープを貸してから三日後の正午。


僕が彼の安否を聞きに行く前に、彼が店に姿を現した。


『どないしたん!?めっちゃ心配したでっ!?』

そう詰め寄る僕に彼は申し訳なさそうに頭を下げた。




『すまんっ!高熱出してもうて、まじ、丸3日、寝込んどってん。』

そういう彼の顔は確かに少し頬が痩せこけ、無精ひげは生えっぱなしで

その言葉に嘘がないのは一目瞭然だった。



『まじ絶対、これのせいや。この2日間‥めちゃくちゃ悪夢見た・・』

彼はそう言うと恐々とビデオテープを僕に手渡した。



『これほんまにヤバいわ‥彼女の言うように早よう寺で焼いた方がええわ・・』

誰よりもビデオテープをテレビ局に送ろうと言い続けていた

彼のその力ない言葉に驚きつつ、僕はそれをしっかりと受け取った。



西田はこの2日間、ずっと枕元に作業着を着た男たちが

代わる代わる現れ、ひたすら怒鳴り続けられた事、

手足を二人の男に引っ張られ、引きづられそうになった事、

夜になるとラップ音がずっと部屋で鳴り続けた事などを

疲弊しきった表情で僕に伝えた。


彼の家は生駒駅から2駅という同じ山の中にある。

そのため、幼少期から聞かされていたその心霊スポットで

肝試しをしようと今回、発案したのだ。


その彼がビデオテープを持って家に帰った・・

他の人以上に霊障を受けてしまったのもなんとなく納得がいく。




彼は彼女に宜しく伝えてくれと言い残し、自分の店へと戻って行った。




ビデオテープの噂は瞬く間に仲間うちに広まったが

立て続けに起こった二人の事故や病気にただならぬ恐怖を感じてか、

テープを貸してくれと言う話が来ることは無かった。



僕自身も勿体無いという想いがかなりあったが、実際に彼女の身に起こったこと、

友人たちの話を聴いても尚、そのテープを家に保管しておく勇気はなかった。



僕は慎重にビデオテープを家に持ち帰り、彼女に手渡した。



彼女はそれを大事そうに檜(ひのき)の木箱に詰め、

翌朝、信貴山の大僧正のもとへと納めに行ってくれた。





あれ以来・・僕たちは肝試しをやめた。

遊び半分で行くには、あまりにもリスクの高い場所があるのだと

身を持って痛感した。




それ以降、不可解な出来事もすっかり収まり、

僕たちは平穏な日常を取り戻す事ができた。




しかし、あのビデオテープを見た人たちは

皆、一生忘れる事はないだろう。





カメラにしっかりと映し出されたあの『無数の腕』と

怒りの感情を心に秘め、僕たちを見つめていた『作業員』の姿を・・・。




どうか、皆さんもこれからの季節・・肝試しだけはやめてください。

静かに眠っている霊たちを揺り起こしたとして


あなた自身が霊障に対処する方法を知らないとしたら・・

あなたの命さえも奪われる事になるかもしれないのだから。



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