翌日、大竹は店に来なかった。


昨日、ビデオテープを渡したことを思い出し、

僕の心に一抹の不安がよぎる。


夕方近くになり、大幅に遅刻をして店に現れた大竹の姿を確認し、

僕は安堵と共に、思わず大きな声をあげた。



『どうしたん!?その足!?』

僕の狼狽(ろうばい)ぶりに彼は照れくさそうな苦笑いを浮かべる。




今朝、仕事に向かう途中にアパートの階段から

足を踏み外して転がり落ちた。


激痛がしたので仕事に向かわずに病院行ったところ

足首の骨にヒビが入っていると言われ、治療を受けていたのだと

彼は松葉杖をさすりながら、僕にため息混じりに答えた。



励ましの言葉を考えている僕の目の前に大竹は

ビデオテープを差し出して言った。




『まさかとは思っとるけど‥一応な。お前も気をつけろよ。』


僕は心の何処かに無意識に隠した負の感情を見透かされたようで

『あ・・あぁ』と力なく答えながらそのテープを受け取った。




大竹は小さく口元を緩めると片足をかばいながら

自分の店へと去っていった。





かける言葉も見つからぬまま、彼を見送る僕に

隣に店を構える、今回の肝試しの首謀者である

西田が声をかけてきた。



『お!それ!例のビデオテープやろ!?』

西田は嬉しそうに近付いてきた。


『ちょっと俺にも貸してや~!』

そう言い寄る彼に、僕は今日の大竹の話をしたが

彼は大げさに首を振って一笑した。


『大丈夫!大丈夫!俺はアイツみたいに鈍くさないからw』

彼は僕の手から、ひょいっとビデオテープを取り上げると

『明日には絶対返すからな~♪』と言いながら店の奥へと消えて行った。



まだ彼女の言っていた期日には時間がある・・


まあ良いか、と軽く考えてた僕は、断る事も出来ずに

彼の背中を見送った。






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