『これ無理やなぁ・・奥に入れんように施錠されとるわ。くそっ!』

高橋はそう言いながら、無機質な檻を力いっぱい蹴りつけた。


静かで真っ暗な空間にグワーンッという鈍い音がこだます。


『ほんならしゃあない・・・引き上げよか。』

大竹は残念そうに口を開き、当然ながらそれを否定する者もなく、

一同は来た道を引き返しはじめた。


「なんや終わってもーたら随分あっけない肝試しやったなーw」

トンネルの入り口から月明かりが少しずつ見え始め、

徐々に緊張感も薄れてきた僕たちは、そんな談笑をしながら

ちょうど半分くらいトンネル奥から戻ってきた。


しかし突然、その和やかな空気が凍りつく。


『え!?なに!!!!ちょっとやだっ!!??』

いきなりあやが悲鳴に近い声を張りあげた。


あやは急に立ち止まったと思ったら、狼狽するように周りを見渡し、


『きゃああああああああああああああああっ!!!』


と絶叫をあげながら、トンネルの入り口目指して走り出したのだ。




周りの仲間もその異常な彼女の反応に驚き、彼女を追いかけるように

トンネルに向かって必死に走り出した。


「なんやねん!?なんかおったんか!?あやーーーっ!!」

「わああああああああああ!!」


叫ぶ者、泣く者、皆パニックになっていた。



突然、泣き喚きながら先頭を走っていたあやが

トンネル入り口前で勢いよく前のめりに転倒した。



『おい!!大丈夫か!!??どないしたんやっ!?』

彼女を追いかけていた仲間の1人が、倒れ込んだ彼女を

素早く抱きかかえ、そのまま引きずるようにトンネルから引っ張り出し、

それと同時に僕たちも皆、肩で息をしながらトンネルを抜け出した。



顔を手で覆いながら泣き崩れる彼女に僕たちが恐る恐る話かけると

彼女は『足が‥あし‥』とか細い声を絞りだした。



彼女の膝からはころんだ拍子でわずかに血が流れていた。


『大丈夫や!全然たいした傷ちゃうから・・・』

と声を掛けた西田の言葉を、ビデオカメラを回していた大竹が遮(さえぎ)った。



『おい‥ちょっと‥これ見てみぃ・・』

彼は少しうわずった声であやの靴を指差した。


その先には、彼女のおろしたての真新しいスニーカー。


しかし、そのスニーカーのソールは何故か、カカトからつま先まで

ベロッとめくれあがっていた。


『これ‥ありえへんよな?』

大竹の言葉に誰も反論することなく、僕たちはただ呆然と


泣きじゃくる彼女の足元を眺めていた。



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