モンゴル馬頭琴
モンゴル遊牧民族にとって馬頭琴と言う楽器はとても大切な楽器です。遊牧民族の五畜(馬、羊、山羊、牛、ラクダ)の一つである馬は一番尊ばれている動物で、馬頭琴の音色は美しいのでこのように敬われています。馬頭琴は奏者が持ちやすくて、膝の間に挟んで弾けるようにつくられ、そして煩く鳴り響くのではなく小さな場所でも心地良く聴いてもらえます。
人々に良く知られている馬頭琴の物語はフフー・ナムジル(Kuku Namjil)と言う名の青年の物語です。彼には分身とも言うべき馬がいました。どんな所へでも連れて行ってくれた馬でした。
ある夜、その馬を持つフフー・ナムジルを妬んでいた一人の女性がその馬を殺してしまいました。フフー・ナムジルは数日間悲しみ、そして自分の馬のために楽器を作る事を決めました。フフー・ナムジルは馬の頭を木で彫刻し、長い棹に繋ぎました。共鳴箱を馬の皮で覆って形を作り、弦には馬の尻尾で棹の上から下まで張りました。弓も馬の尾で作りました。そして、彼は作った馬頭琴を弾きながら馬のいななきや走り方を演奏しました。
現在、馬頭琴はモンゴルだけではなく世界中の国々でも知られるようになりました。遊牧民族の生活文化の中から生まれ大切にされてきた馬頭琴は、2004年にUNESCOから「世界無形文化遺産」と登録されました。モンゴル遊牧民族から生まれたこの馬頭琴、今は世界中の人々の心に届く楽器になりました。