モンゴル乳製品


乳製品とは、動物の乳、とくに牛乳 を加工してつくられる製品の総称。乳製品を製造することを製酪または製乳という。

乳製品は「白い食べ物」と呼ばれ、その白い色は清純な心を表す印として愛され、大切にされてきました。またその種類も豊富で、様々な形となって毎日の食卓に出されます。
乳製品のつくり方は、搾乳した乳を夕方にまとめて鍋の中で静かに加熱しながら攪拌し、乳脂肪を上に集めます。そこに小麦粉を少々加えて翌朝まで置くことで乳脂肪が集まって膜を形成し、甘く上等なクリームの味がする「ウルム」という乳製品が出来上がります。翌朝すぐにこの「ウルム」を食べるほか、バターをつくる原料として保存したりします。

「ウルム」製造後、脱脂された乳はそのまま加熱し、途中少量の発酵乳を加えてpHを下げます。その後、乳中に含まれるカゼイン(乳蛋白)を集めて「ビャスラク」という、カッテイジチーズを固めたような真っ白で淡白な味のチーズをつくります。
また、さらにじっくりと弱火で煮詰めて、褐色のミルクキャラメル状のチーズ「エーズギー」をつくります。

すぐにこのようなチーズへ加工しない場合は、脱脂乳を、家庭に常備されている乳の保存用の大きな発酵容器に加えます。容器の中には常に一定量の発酵乳が残されています。ここに脱脂乳を加え、微生物の働きを利用して発酵乳を増やします。発酵乳を加熱すると、乳に含まれる酸と熱によって、酸っぱい「アロール」という真っ白なチーズが出来ます。これらのチーズはいずれも戸外で乾燥させます。チーズの中でも「アロール」が、モンゴルの母の味として最も好まれています。
「ウルム」、「ビャスラク」、「エーズギー」、「アロール」の4つがスタンダードな乳製品です。
最初に貴重なエネルギー源である乳脂肪を取り、脱脂された乳を発酵させ、そこに熱を加えることで、連続的に乳中の成分を抽出しています。西洋式の乳加工では廃棄されている乳糖を多く含んだ乳清(ホエー)も、蒸留酒の原料、皮のなめしに利用され、成分を無駄にしないことが大きな特色です。モンゴルの乳加工は、乳の科学的な性質を経験的に理解し尽くした上で行われているのです。


夏季、これらの乳製品のつくりたてを食べることは「冬の肉食で疲れたお腹を白くする」として健康に良いといわれています。そして涼しい秋になると、「ウルム」をつくった後の脱脂乳に発酵乳を加えて静置し、「タラグ」(ヨーグルト)をつくります。「タラグ」は「下痢に効く」といわれているほか、離乳食としても利用されています。白く硬い乳製品は、子どもにとって食事であり、おしゃぶりの役割も果たしています。そして、乾燥して硬くなった「エーズギー」、「アロール」を冬の保存食として夏季の間に200kg前後貯えるのも、女性の大切な仕事です。長い間、草原ではヤギ、ヒツジの乳が乳加工の中心でしたが、20世紀に入ってからは泌乳量の多い牛乳がその中心となりました。