モンゴルゲル
モンゴルの草原で暮らす遊牧民にとって、ゲルとは草原に建つ家のことをさす。ゲルは基礎を造った固定家屋と違って、移動するための分解・組立が容易に工夫された家なのである。
ゲルは円形で、中心の柱(2本)によって支えられた骨組みをもち、屋根部分には中心から放射状に梁が渡される。これにヒツジ
の毛でつくったフェルト
をかぶせ、屋根・壁に相当する覆いとする。壁の外周部分の骨格は木組みで、ジャバラ式に折り畳むことができる。木組みの軸にあたる部分にはラクダ
の腱が使われる。寒さが厳しいときは、フェルトを二重張りにしたり、オオカミ
などの毛皮を張り巡らしたりして防寒とする。逆に、夏の日中暑いときはフェルトの床部分をめくり、簡単に風通しをよくすることができる。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/7e/06/10057000867_s.jpg?caw=800)
モンゴル帝国の時代ころまでは車輪をつけ、ウマを使って引っ張って長距離を簡単に移動できるゲルが存在したことが、当時の旅行記の記録からわかっている。現在はそれほど大規模な移動は行われないため、移動のたびに分解してラクダ
の背やトラックに乗せて運ぶ。分解や組み立ては共に遊牧を行う数家族の男たちが総出で行ない、数十分から1時間で終わる。
ゲル1帳は、おおむね夫婦を中心とする1小家族が住むが、遊牧民たちは一般に2~3帳のゲルからなる拡大家族集団(アイル、現代モンゴル語
では「仲間」とか「村」の意味もある)でまとまって遊牧を行う。拡大家族はそれぞれの戸長が親子、兄弟などからなる場合が多いが、地域によっては戸長の友人関係で血縁関係の薄い数家族が集まる場合もある。同じ地域で遊牧を行う複数のアイルの集合体がいわゆる部族(アイマク
)であり、これらが遊牧民の政治単位となるが、現在では解体されており、現代のモンゴル国ではアイマクは県を指す。
現代のモンゴル国の前身となった清朝
統治下の外モンゴル
では、もっとも大きなゲルに住み、もっとも数の多いフレーを従えていたのは外モンゴルを代表する活仏
であるジェブツンダンパ・ホトクト
であった。のちにジェブツンダンパのフレーは遊牧移動をやめて一箇所に定着し、19世紀
には漢民族
の商人も住み着く都市に変貌する。この都市が、現在のモンゴル国の首都ウランバートル
の前身であるイフ・フレー(大フレー)である。現在も、ウランバートル市内には固定家屋と並んで庭にゲルを立て、都市内であえてゲルで生活する人も非常に多い。
モンゴル「ゲル」組み立て方
1.ハナ(壁)の組立て
ハナとハナを一枚づつ組合わせ円形にする。(直径6m程度)大きな家財は、先に入れておく。
2.扉の取付け
扉の上下両端の穴を紐でハナとしっかり結び固定する。
3.親柱を立てる
トーノ(天井)に親柱(支柱)を取付け、ボルトで固定する。複数人で支えながら、ロープ又はオニ棒で四方から固定し、親柱が倒れないようにする。その際、トーノに差込んでいるオニ棒の先端はボルトにて固定する。ハナ側のオニ棒は、ハナの股に置き、紐で固定する。
4.オニ棒の差込み
トーノに1本づつオニ棒を差込む。(約62本程度)
5.側面のフェルトの張付け
フェルトは横張り3枚、天井2枚の合計5枚。横張りは、短い2枚を扉の左右より張り、残りの部分に長い1枚を使用する。(あまる部分は天井の方へ回す。)張り終えると、ロープでしっかり固定する。
6.天井のフェルトの張付け
天井はまず、白い布を張り、その上からフェルトを張る。
張り終えると、ロープでしっかり固定する。
7.仕上げ
最後に白い布をかけて、側面・上下をロープで縛り、しっかりと固定する。
(扉に4ヶ所、側面縛り用の金具があります)
8.内装
紺色の布をジャバラに張る。短い布を扉の左右より張ってゆき、最後に大きな布を張る。紐掛けは上の部分はオニ棒に結び、下の部分はジャバラの股に結ぶ。
(布の穴に紐を通し、全体を結ぶ。)