モンゴル遊牧民


モンゴルの首都はウランバートルです。人口は、約240万人と日本の約1/50ですが、遊牧民の数は約40万人と、世界一の遊牧国です。遊牧の起源は、人が野生の動物と生活を共にし、狼などの外敵から守りながら、乳や肉を貰うようになったものであると考えられています。現在、ヒツジ・ヤギ・ウシ・ウマ・ラクダの五畜が草原の植生に合わせて飼われ、世界の遊牧で飼われている家畜のすべてが揃っています。遊牧生活は1年に数回、家畜とともに草原を移動し、ゲルと呼ばれる移動式天幕住居に住んでいます。料理、乳加工の燃料はウシの糞を乾燥させた「アルガリ」です。家畜からは乳、肉のほか、毛皮から衣服、毛からフエルト、皮からは馬乳を発酵させる発酵容器フフルなどの様々な保存容器をつくっています。一方、家畜の恵みに依存する食生活の中で、都心部に住む一部のモンゴル人を除いて魚はどのような調理方法でも遊牧民は食べません。その理由として、本能的に湿った土地は健康に良くないとして嫌い、水のあるところから意図的に離れて暮してきた習慣が反映し、水に住む魚を食べないことに繋がったようです。しかし中国内蒙古自治区に住むモンゴル族の一部は、淡水魚を発酵させた独特な発酵食品をつくっています。


遊牧は飼育方法のひとつで、モンゴルで一般的に行われている放牧形態です。季節に合わせて住む場所を異動します。モンゴルの遊牧民は、主に牛・馬・羊・山羊・ラクダの5家畜を扱い、各家庭でそれぞれ主体とする家畜を決めています。モンゴル人の主食とされているのは羊肉で、飼っている家畜の半数以上が羊のところが殆どです。男性が放牧を担当して、女性は乳搾りは家事に専念しています。

遊牧民が移動して暮らす地域をノタクと呼びます。ノタクは季節に合わせて最適の場所を考慮して決めています。

【春】 家畜の出産があるので、雪解けの早い場所を選びます。
【夏】 水のある近くで、草の豊富な場所を選びます。
【秋】 冬の準備のために家畜を太らせるため草を沢山与えるため、草の豊富 な場所を選びます。
【冬】 山間部など風を避けられる場所に移動します。

家畜から羊毛お乳を取ったり、お肉として売って生計をたてています。国有だった家畜も私有化されて、個人の財産となっています。牧民にとって春は最も忙しい時期で、家畜の出産が始まります。羊や山羊は三月頃から、牛は三月末から四月にかけて、馬やラクダは四月の初めから終わりにかけています。遊牧民にとって、夏は希望に満ち満ちている季節です。この時期は男たちにとって最大の任務は、家畜に栄養分のある良い草を多く食べさせることです。そして家畜を良く太らせます。男たちはそのために朝から夜まで毎日、家畜の群れを引き連れて、良い草のあるところへ、水のあるところへと出かけて行きます。女たちの任務は、乳製品をづくりと畜舎の掃除など、特にアイラグ(馬乳酒)づくるため馬乳搾りは朝から夜まで2時間おきに、一日に7回もやります。(他の家畜は朝と夜の2回だけです)
   

8月、モンゴルの遊牧民たちに、早くもアルタン・ナマル(黄金の秋)と呼ばれる秋が訪れる。秋は遊牧民たちにとって、秋である当時に、その後に来る厳しい冬を過ごすためのすべての準備を整える時期です。家畜を肥やすために良い草がある所を探してもうひと頑張りを入れる。一家総出で、朝から日の暮れるまでの草刈に精を出す。風当たりの弱い所を選んで、草を蓄えておく場所をつくる。畜舎を整える。その他にも、男たちは山へ行って薪を集める。女たちは、これも薪の代わりになる乾ききっている牛のフンを集める。牛の糞は良く乾燥させると燃料になり、燃やしても匂いが出ない。


遊牧民たちは牛の糞を乾かす事も大切な仕事です。また、ラクダの糞は、お香代わりになるそうです。自然の中で自然に出来たものを利用している遊牧民たちの知恵には驚かされるばかりです。遊牧民たちは夜は長い、ゲルの中を中心とした冬を送る。ゲルの真ん中にあるストーブには、一日中火を絶えることがない。秋の準備がなければこの長い冬はしのげないんです。男たちは毎日なるべく雪の少ないところを探して家畜をつれて出掛けています。もう一つは狩です。冬は動物の肉に脂肪分が多く、チャンスです。猪、狐、狼、ウサギ、熊などを狙います。初雪の降った朝の狩は最大チャンスです。真っ白に積もった雪の上にくっきりと動物の足跡がついているからです。女たちは元気のない家畜の世話をしてやったり、畜舎の掃除をしたり、凍った川の水を掘って水をくんできたり、縫い物をしたり、食事の準備をしています。遊牧民にとって怖いのは、一つは狼、一つはゾド(雪害)です。