


















新暦 八月二十三日 頃
処は落ち着くという意味を持った漢字です
『暦便覧』に
陽気とどまりて
初めて退きやまんとすればなり
とあるように
暑さがおさまる時期ということです
まだ残暑は厳しいかもしれませんが
朝夕に
涼しさを感じる日もでてくることでしょう
処暑の初候では
綿の実がはじけて
ふんわりとした綿花が
顔をのぞかせる頃となっています
秋の花が咲きそろってくる時期ともいえますね
そして
空気が澄みきってくると
いよいよ稲🌾が実りのときを迎えます
ただ
台風の被害を受けやすいのもこの頃
警戒が必要な時期となります
退紅タイコウの退の字を見ると
南宋の詞ツーの
歌舞の高台、風流は全て雨風に打ち砕かれる
を思い出します
穏やかな姿は
雨風が去ったあとの静けさです
盛唐の頃
桜(ユスラウメ)があちこちに
咲き誇っていたことを知れば
桜花オウカの色を見ると
古都長安が思い浮かぶかもしれません
桜の下で酒に酔う楊貴妃が見えませんか
丁香テイコウは近代詩に詠まれました
私は会いたい。一枝の丁香と同じくように、
愁いと怨みに結ばれた乙女に、
乙女にあるのは、
丁香の色、丁香の馥郁さ、丁香の優
のイメージどおりの色です
木槿モクキンは朝に咲き暮れに萎みます
桜の寿命よりも短くあわただしい
『詩経しきょう』ではこの花を愛華と呼びました
題 画
唐 寅
楊 柳 陰 濃 夏 日 遅
村 辺 高 館 漫 平 池
隣 翁 挈 榼 乗 清 早
来 決 輪 贏 昨 日 棊
画がに題だいす
唐寅とういん
楊柳ようりゅう陰かげ濃こまやかにして
夏日かじつ遅し
村辺そんべんの高館こうかん平池へいち漫みなぎる
隣翁榼りんおうこうを挈ひっさげて
清早せいそうに乗じょうじ
来たりて輸嬴ゆえいを決す昨日の棊き
隣のじいさんは
酒壺をひっさげ、
朝の涼しいうちに、
昨日の碁の勝敗を
つけようと
やってくる。
俗世を超えた
風流の世界。
訳🌱
楊柳の陰が地面に黒々と落ち
夏の日がゆっくり過ぎて行く
村の近くの高館
池の水は漫漫と平らか
隣のじいさんは酒壺をひっさげ
朝の涼しいうちに
昨日の碁の勝敗をつけようとやってくる
🌿
暑くて日が長い夏
前半の二句は高駢の山亭夏日の
緑樹りょくじゅ陰濃やかにして夏日長し
楼台ろうだい影を倒さかしまにして
池塘ちとうに入るを踏まえています
雨が降って漫漫と水がたたえられても
日の長い夏の水辺は蒸し暑いもの
そこで隣のじいさんは朝の涼しいうちに
酒壺をひっさげて碁の決着をつけにやってきます
俗世を超えた風流の世界です
榼こう は酒壺
輸贏ゆえい は勝ち負けの意
明
唐寅 とういん
1470〜1523
字は子畏
呉県(江蘇省蘇州市)の人
六如居士と号した
弘治11年(1498)南京郷試に首席で合格したが
翌年の会試に試験問題漏洩事件に
巻き込まれて投獄された
その後は桃花塢に家を建て
江南第一風流才子と称して気ままに暮らした
詩・文・書・画に巧み



















