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ある人の
「月の顔見かほみるは忌いむこと」と
制しけれども
ともすれば人まに月を見ては
いみじく泣き給ふ
七月十五日の月に出いでゐて
切せちに物思へる氣色けしきなり
竹取物語
帝と文を交わしあって三年が過ぎた頃から
かぐや姫は月の美しい夜には
物思いにふけるようになった
「月の顔を見ることは不吉なことですよ」と制しても
人目のないところで月をみては
泣いてばかりいる
七月十五日の月の夜には
奥より出てきて月を見て
ひたすらに思い悩んでいるようであった
十五夜🌔
じゅうごや
旧暦八月十五日の月のこと
中秋の名月
中秋というのは
秋のちょうど真ん中の日
という意味があります
旧暦では
秋は七月から九月までなので
八月十五日というのは
秋の折り返し地点
なので「中」秋と書きます
これを「仲」秋と書くと
八月すべての月を指すことになります
初秋は七月
仲秋は八月
晩秋は九月
を表す言葉です
月の🌔満ち欠け🌒の周期は
およそ二十九・五日だから
日にちがずれて
十五夜が満月🌕にならないときも
めずらしくありません
いまでは秋の月見は
満月かどうかにかかわらず
旧暦八月十五日の月を
愛でることになっていますが
昔は秋分にほど近い満月🌕を眺めていたとか
ちょうど旬の里芋のようにまん丸いから
芋名月🌕という別名もあります
名月やマクドナルドのMの上
小沢麻結
今日の月🌔
けふ (きょう) のつき
中秋の名月を
俳句の世界では
今日の月🌔と詠むことがあります
また今宵の月🌔
月今宵🌔つきこよいともいいます
花といえば桜
今日の月といえば十五夜というように
ある世界観を背景に持つ言葉
旬にふれれば
なるほどたしかに
今日の月といわれると十五夜のことだと
伝わってきます
十五夜から酒を呑のみ出てけふの月
宝井其角
たからいきかく
けふの月長いすゝきを活けにけり
阿波野青畝
あわのせいほ
されども天は美人を生んで美人を恵まず
多くは良配を得ざらしむとかいへり
彌生やよいの花は風必ずさそひ十五夜の
月雲つきくもかかゝらぬはまことに稀なり
別れ霜📖 樋口一葉
きのふは仲秋ちうしう十五夜じふごやで
無事平安な例年にもめづらしい
一天澄渡いつてんすみわたつた明月であつた
十六夜📖 泉鏡花





