













「さて、どうしようか」
僕は
どこへというあてもなく
海沿いの道を引き返した
すると
『仏蘭西料理朗月楼』
という看板を出した和風の大きな門が
岬の鼻に建っているのが目に飛び込んできた
来るときは気が付かなかったが・・・・・・
僕は
ぼんやりとした明かりに照らされた
その古風な門をくぐって
細い坂道を上っていった
崖の上に
まるで展望台のような駐車場が
しつらえてある
車を停めると
もう夜色の降りた海が一望され
崖下から冷たい海風が吹き上って来た
客は
その夜
僕たちだけしか居なかった
駆け落ちの密会のように
しめやかな夕食だった
🌓運命 Lunar Destiny 林 望🌓
十日余りの月
とおかあまりの月
十一日めの月のことを
十日余りの月といいます
また二十一日めの月は
二十日余りの月と呼びます
それなら九日めの月は
十日足らずの月
とでもいうのかと思ったら
そんな名前はないようです
🌓📖
九日の月がそらにかかっていました
そしてうろこ雲が空いっぱいでした
うろこぐもはみんな
もう月のひかりがはらわたの底までも
しみとおってよろよろするというふうでした
その雲のすきまからときどき冷たい星が
ぴっかりぴっかり顔をだしました
宮沢賢治 「月夜のでんしんばしら」より
📖🌓
うろこ雲も
星も
まるで生きているように描かれています
これは月夜の晩に
でんしんばしらが行進する童話の冒頭
人の目を盗んで
こっそりと物たちが動きだす話は楽しい
物にも魂が宿っており
万物には神性が具そなわっている
というアニミズムの世界観は
賢治の童話によく親しみます
夜中に歩きだすでんしんばしらは
どんな連中かというと
行進のときにこんな歌を
歌って聞かせてくれます

ドッテテドッテテ、ドッテテド、
でんしんばしらのぐんたいは
はやさせかいにたぐいなし

この
「ドッテテドッテテ」
の
なんとも間の抜けたリズムは
読んでいるうちにいつのまにか
脳裏にこびりついてとれなくなります
世界中のぐんたいが
これぐらいのんきだったらいいなあ
と思います
ユーモラスで
まぬけで
のんきで
真夜中にこっそり線路沿いを散歩する以外は
ずっと大人しくしてたらいいと思います
乱蔵🌓です
光のカケラ☆に
触れて下さって ありがとうございます

上弦を過ぎ満月🌕へと満ちていく月
こちらは雨模様となり 見えませんが
みなさんのところでは 微笑んでいるのでしょうか
今宵も素敵な夜⭐️となりますように


















