ダブルストーマへの道 | 今日もいちにち生きました

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2016年、直腸癌が再発。
治療の結果、一生の障害を負うことになりました。
2022年胃がん発覚。2023年咽頭がん発覚
3つの癌を抱える今。
以前の私とは生き方が変わりました。
がんと闘い、生き抜くことができた日々。
今日という日をつづります。

5年前の今日、10月12日

私は初発の手術を受けました。

 

怖かったなあ。

 

手術台に上がった後。

看護師さんが

「横向いてください」

「背中を少し丸めて」

など指示をくれるんですが意気地のない私は

ドタキャンを考えてました。

 

『今ならまだ間に合う。帰ります!とさえ言えばいいんだ』

 

今更言えるのか。

いや、言える。そして言うなら今だ!

そんな葛藤をしていたわけです。

 

そのうち、看護師さんが

「ちょっと痛みますよ」

と背中に麻酔を打ちました。

 

これが実際、痛かった。

その痛みで心のタガが取れました。

 

『もう、言っちゃおう。ドタキャンします。絶対言おう。今言おう。』

本気でそう考えました。

 

で、次の瞬間に聞こえてきた言葉は

「手術終わりましたよ。」

 

は???? 終わったって????

私のあずかり知らぬところで4時間が経っていたんです。

不思議ですよね。

全身麻酔の手術をする誰もが経験する感覚でしょう。

 

何はともあれ、私のがん治療はこれで一応の完結をみました。

郭清したリンパ節は全て健康で

私はステージ2の直腸癌として確定診断されました。

5年生存率85%。

 

術後の医師の言葉は

「一緒に根治を目指しましょうね」

 

頼もしく自身に満ちた言葉でした。

悪いところは取り去った。

私は治ったのだ。

その時の心境でした。

 

ところがその1年半後、異変は起こります。

突然下血が始まったのです。

 

それでも私は気楽なままでした。

何しろ悪いところは取ったのだから。

 

気楽に病院を訪れ

気楽に検査を受け

気楽に診断を聞ききに行きました。

 

そして、医師が口を開きました。

「再発です。残念ながら」

 

「・・・・・」

 

「人工肛門になります」

 

しかも・・・・。

 

「再発した部分が前立腺に接触しています。

浸潤の可能性があり、もしそうなら怪しい臓器を全て取らなければなりません」

 

「つ、つまりどういうことですか」

 

「骨盤内全摘術です。その場合、ストーマは二つ増設することになります」

 

目の前が真っ暗とはこのことだと思いました。

何がどうなっているのか。

分からない。何も分からない。

 

その後、頼ったのはセカンドオピニオン。

私は救いを求めていました。

回った病院は4件。

 

その中の一件

シングルストーマでいけるんじゃないかと言ってくれた病院。

それが今も通っている病院です。

 

抗がん剤と放射線で腫瘍を叩く。

前立腺の腫瘍接触部は削り取る。

 

この方法なら人工肛門にはなりますが、

それ以外の機能は全て温存されます。

 

私はそれに賭けました。

1年に及ぶ、術前科学放射線療法。

 

私の場合、強烈な痛みを伴いましたが耐え抜きました。

膀胱や前立腺の温存を提案してくれた唯一の病院。

この病院を信頼することが私にできる唯一のことだったわけです。

そして「希望」というものがどれほど力を与えてくれるものかを

経験した1年でもありました。

 

2016年、7月4日。

10時間に手術。

 

初発時のあの怖さはもうありません。

ひたすら成功を祈るのみです。

 

術後、成功したとの説明がありました。

痛みは激しかったけれども心は踊っていました。

 

最悪の事態は避けられた。

そう思いました。

 

セカンドオピニオンを回った日々。

化学療法や放射線療法に耐え抜いた日々。

それが報われたのです。

 

ところが7月の半ばごろ

おかしなことに気づきました。

 

おしっこをすると、お尻が濡れるのです。

そのうち濡れる量が増え、

やがて暖かな液体として足を滴り落ちていくようになりました。

 

得体のしれないことが体内で起きている。

医師に伝えました。

その顔がたちまち曇っていくのがわかりました。

この液体は何なのか。

 

検査の結果を受けて緊急面談。

外科部長、主治医、私の3人です。

 

医師曰く

尿道に穴が空いており、尿が漏れている。

 

こうなったら尿道を取り去り

人口尿路を増設する以外に道はない。

 

尿道を取るということは

尿道が走っている前立腺を取るということです。

 

膀胱ももはや不要でこれも取ります。

それ以外の臓器も・・・・すなわち

 

骨盤内全摘。

そしてダブルストーマを受け入れる。

 

この瞬間、私のこれまでのあがきは

全て水泡に帰したことを悟りました。

 

即答できる精神状態ではありませんでした。

 

「2〜3日、考える時間をください。」

と答えるのがやっとでした。

 

またセカンドオピニオンを求めようか。

いや、この体では何の動きも取れない。

もはや覚悟を決める他はありません。

 

そして8月1日、

骨盤内全摘手術を受けました。

 

術後

お腹には二つの出口が空いていました。

 

この再発は私の人生観を変え

二つの出口はライフスタイルを変えました。

 

今、私は違う人生を歩んでいると感じています。

 

その違いは単純な物差しで

図れるようなものではありません。

 

間違い無く言えるのは

私はこういう体を持った人間として

生きていくことになったということです。

 

最悪の事態。

以前の私はダブルストーマをそう見ていました。

 

けれども実際になってみると分かります。

決して最悪などではない。

 

違う道を歩む。

見える景色も違います。

物の見え方、人の見え方、感じ方。

いろいろなことが変わりました。

 

ふと、そんな自分を楽しんでいることに

気がつくことがあります。

 

がんにならなければ

再発しなければ

ダブルストーマにならなければ

気がつかなかったあらゆること。

 

今、私は自分に湧いた興味に蓋をしません。

意識してそうしています。

 

好奇心が湧いたのならそれを満足させてみる。

それが楽しい。

 

最悪の事態?

いやいやとんでもない。

 

新しい人生の幕開けですよ。

 

負け惜しみなどでは無く

本気でそう思えれば

今歩んでいるこの道が

光り輝く道になるかもしれない。

 

そんなことを考えながら

今日は寝ます。

 

最初の手術から丸5年目の夜です。

 

 

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