天秤 | 今日もいちにち生きました

今日もいちにち生きました

2016年、直腸癌が再発。
治療の結果、一生の障害を負うことになりました。
2022年胃がん発覚。2023年咽頭がん発覚
3つの癌を抱える今。
以前の私とは生き方が変わりました。
がんと闘い、生き抜くことができた日々。
今日という日をつづります。

がん治療は多かれ少なかれ代償を伴います。

これが進行癌ともなれば代償は飛躍的に大きくなります。

再発がんならさらに。


私の3年弱のがん経験から体で学んだことです。

「肉を立たせて骨を断つ」

限界地点に近い治療の現場ではこうしたことが
日常茶飯事。

そこで必要になってくるのが天秤。

つまり、治療による利益と払う代償と計りにかけてどちらが上回るかを
精密に判断すること。

治療方針を決める上で極めて重要です。

ところが謎多きがん治療の世界ではこれが実に大変。


今から思えば 初発の時は楽だった。
悩む要素もなかった。

当時は

1) 後遺症としての排泄障害
2) 腫瘍の完全切除

この二つを天秤にかければ結果は明らか。

一も二もなく手術を選択しました。


ところが私のがんは甘くはなかった。

1年半後に再発。
完治の夢を見事に打ち砕いてくれました。

これからどうする?

そこで再び、天秤の登場

1) 根治を目指してダブルストーマ手術を受ける
2) ボディーダメージを避け、がんとの共存を図る。

さあて、どちらに軍配をあげるべきか。
初発時とは大違いで迷いに迷いました。


ここでちょっと補足
ダブルストーマとは
人工肛門と人工膀胱を同時に増設することです。

排泄機能の全てを失いますからQOLは格段に落ちます。
一日中排泄ケアのための生活にもなりかねない。

私の場合前回の手術で
つなぎ合わせた吻合部からの再発です。
その腫瘍が前立腺に浸潤しています。

拡大手術となれば残った直腸と
前立腺も切除します。

前立腺には尿道が通ってます。
尿道を失った膀胱はもはや用をなしませんからこれも切除。
回腸の一部を切り取って膀胱の替わりとし、
そこに腎臓からの尿管をつなげ
お腹から出すという仕組み
つまりこれが人工膀胱となるわけですね。

いわゆる骨盤内全摘という大手術となるわけです。

無論、それで完治は約束されません。
いや、むしろこの再発のしかた(両側のリンパ節にも転移しています)
からすれば、再々発のリスクは非常に高い。

それが医師団の統一した見解です。

骨盤内を空洞にし、ダブルストーマを受け入れた体で
再々発が起きた場合何が起きるのか。

未知数ではあるものの
医師の言葉を借りれば多大な代償を払ったこの手術は無駄だった
ということになる。

ここで改めて天秤にかけてみる。

1) 再々発のリスクを抱えたままダブルストーマ手術に踏み切る
2) 現在の体を保ったままがんとの共存を図る


天秤は平行を保ったまま。結論は出ません。

そこで、私はセカンドオピニオンの走ったわけです。

すると違う角度からの意見が出てきました。

「前立腺にがっつり食い込んでいるとも思えない。」

「抗がん剤で縮小できればシングルストーマだけでいけるんじゃないか。」


前立腺を残したとして
そこに残ったがん細胞が暴れ出した場合は?

「その時はまた取りに行けばいい。」

一気に切除せず、リスクとにらめっこしながら
手術手段や体力を温存しようとする作戦か。


この時、天秤は

1) 抗がん剤での縮小を狙いシングルストーマ手術にとどめる。
  将来前立腺浸潤が見られた場合はダブルストーマ手術に臨む

2) ダブルストーマ手術で一気に完治を狙う


この天秤では明らかにシングルストーマ手術に分があるとみます。

シングルでも完治の望みはあるからです。


代償よりも利益が上回る。
ようやく見つけた天秤でした。

今は、この提案をしてくれた病院に転院し
セカンドラインの抗がん剤投与中です。

勝負は腫瘍が縮まること。
そうすれば手術の範囲も最小限にとどめることができます。

その検査がいよいよ今週末に迫っています。



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