ラ・カンパネラの憂鬱 | 人間観察放浪記

人間観察放浪記

一生、ときめくのである。

もう、2年も前の話になりますが

アメリカの音楽祭ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにて

優勝された、ピアニストの辻井伸行さんの「ラ・カンパネラ」が

僕はとても好きです。


正直な話、ピアニストの優劣は私や多くの人には区別がつかないものです。

プロのピアニストにしてもそれはまことに細かな違いになってくるのだ、と

以前ピアノの道を歩んでいた友人からも聞きました。


しかしながら、辻井さんの場合には

人並ならぬバックグランドがあり、だからこそ我々聴衆に

胸が熱くなるものを感じさせるようなことがあるのです。


彼は、生まれてから目が見えません。

もちろんのことながら、ピアノの鍵盤も手の感覚と耳の感覚で

音を確かめながらピアノを弾きます。

並々ならぬ人生を歩んできたであろう辻井さんのピアノが

胸を熱くさせます。


優勝後にマスコミの過熱報道が起こりました。

「盲目のピアニスト」として、多くの好機の目が注がれる中、

ひとりの記者がこんな質問をしました。

「もし今、目が見えたら何が見たいですか?」

後に、物議を呼んだこの質問ですが、淡々と彼はこう答えます。

「両親の顔です」と。付け加えるように両親に対する想いと、

「今は目が見えなくても幸せであり、心で様々なモノを見ることができる」

と言っていたような覚えがあります。


彼は今、世界で活躍するピアニストです。

様々なバックグラウンドは彼の音楽性を高め、聴く人に感動を与えます。

このラ・カンパネラの後の拍手の喝采は胸を熱くさせます。