近所の花々 5 ~八重のヤマブキ~
「ヤマブキ」。
小さい花ながら
緑の葉の中で咲くと
少しだけでもやけに目立つ。
ヤマブキ色といえば
オレンジ色と黄色の中間色で、
良く小判の色にたとえられる。
小判なんて
見たこともないのだが
金色よりも
どことなく温かみがあって
好きだ。
一重のヤマブキは
硬い実を付けるが、
八重のヤマブキには
実がならない。
そこで出てくるのが
太田道灌の山吹伝説。
道灌が父を尋ねて越生(おごせ)の地に来た時、
突然のにわか雨に遭い
農家で蓑を借りようと立ち寄った。
その時、娘が出てきて一輪の山吹の花を差し出した。
道灌は、蓑を借りようとしたのに花を出されて戸惑った。
後でこの話を家臣にしたところ、
それは後拾遺和歌集の
「七重八重 花は咲けども 山吹の
実の一つだに なきぞ悲しき」の
兼明親王の歌に掛けて、
山間(やまあい)の茅葺きの家であり
貧しくて 蓑(実の)ひとつないことを
奥ゆかしく答えたのではないかと教えられた。
道灌は、
古歌を知らなかった事を恥じて、
それ以後歌道に励み、
歌人としても名高くなったという。
(ウィキペディア 太田道灌 一部筆者変更)
まさに伝説である。
だからこの話は
素直に聞かなければならない。
たとえば筆者のように、
カヤぶきの貧しい農家の娘が、
太田道灌でさえ知らなかった
『後拾遺和歌集』(ごしゅういわかしゅう)
全二十巻、総歌数1218首を
知っているはずがない、などと
疑ってかかったらいけない。
伝説なのだから、
美しい話として
信じることが大切である。
山吹は
そんな伝説を生み出すほど
素晴らしい色合いの花である。


