我が家の節分 ~恵方巻と大豆と~
私の育った鹿児島では、
節分の行事といえば、
「鬼は外!福は内!」の
豆まきだけ。
それだけのことでも、
子供心に
家の入り口で
大きな声を出して叫んで豆をまき、
終わったら大豆をおいしそうに食べたものだが、
余り食べすぎると
大豆はお腹の中で十倍に膨れるから
お腹がパンクするぞと脅かされ、
恐る恐る食べたことを思い出す。
物心ついたころには、
食べるのが
大豆の代わりに
甘納豆になっていたのは嬉しかった。
恵方巻という名前も知らず
恵方巻を食べる習慣など
まるでなかったので
転勤で東京に越してきてから、
恵方巻のことを聞いた時には
「なんで太巻きなの?」と
不思議でならなかった。
調べると、
バレンタインのチョコと同じで
寿司屋とか
スーパー、コンビニの陰謀に
世間が乗せられたものらしいが、
我が家では
せっかくだからと
わざと乗せられている。
なぜ乗せられているかというと、
買ってきて食べるだけだから
大いに妻の手間が省ける。
恵方巻を食べる習慣がなかったのだから、
今年の方角を向いてかぶりつく、なんてこともしない。
そんな意味のない縁起などは
これっぽっちも担がない。
だから我が家は
二種類の恵方巻が
食べやすい大きさに切って出てくる。
私は
夜には晩酌だけで
ライス類は食べないから、
恵方巻が出てくるのは
節分の日のお昼。
では、
鬼にぶつける豆はどうするかというと、
それはやはり夜に出てくる。
「鬼は外!福は内!」の掛け声は小さく、
一つまみの大豆を指でつまんで
皿の中で形だけ撒く。
そしてそのあと、
大豆は私の酒の肴となる。
歳の数だけ食べる、なんてことも
とうの昔にやめた。
子供が巣立つと
こうして昔の習慣が
どんどん失われていくのだろうか。
息子夫婦に引き継がれていることを祈りたい。
でも、
隣近所に
小さな子供のいる家庭はたくさんあるのだが、
夜になっても
どこからも
「鬼は外!福は内!」の声は聞こえてこなかった。
子供がいてもいなくても
すたれていく行事のような気がして、
少し寂しい。

