小説「永遠の0」続き ~作品と作家の関係について~
前のブログで、
百田尚樹氏の書いた小説、
「永遠の0(ゼロ)」を紹介するにあたり、
「作家の人格」と
「作品の良さ」は
「全く関係のないこと」であることを、
ここで断言する。
彼が何を話しして、
誰に批判されようと、
この作品の良さは
揺らぎはしない。
と書いた。
作家の人格と
作品の良さが
全く関係のないことは、
いまさら私が
ことさら述べるほどのことではないが、
都知事選での
百田尚樹氏の応援演説の内容を見聞きして、
作品に対する己の判断を
曇らせている人がいるのを知ると、
老婆心ながら、
一言書きたい。
百田尚樹氏は
永遠の0という作品の前に
ある程度作家としての地位を
確立されていた方ではあるが、
それでも、
日本国民の多くは
彼のことをほとんど知らなかった、といっていい。
その人にとって、
自分の知らない作家は
まだ未知の作家であって、
新人に等しい。
だから、
その人の作品が
素晴らしいかどうかは
作品を読んで己が判断するまでは、
全くの白紙である。
ところが
人は実に勝手なもので、
作品を読む前に
その人の悪い評判を目の当たりにすると、
あっという間に
自分の判断基準を
完全に曇らせてしまう人が多い。
客観的に
物事を判断できなくなってしまうのは、
感情論が先に立ってしまう人の
最も恐れなくてはならないことである。
著名な作家の例をとろう。
例えば
芥川龍之介。 (以後人名に対する敬称は略)
「羅生門」とか
「鼻」
「藪の中」など
比較的短編の多い作家だが、
彼は
30代で神経衰弱などを病み、
秘書と帝国ホテルで
心中未遂事件を起こしており、
結局
1927年
睡眠薬自殺をしてしまった。(服毒自殺との説もある)
しかし
多くの人は
彼の作品の素晴らしさを、
自分が読む前から教育を受けて知ったために、
後から知った彼の性格などは
作品の判断には
何の影響も及ぼしていないのが普通である。
川端康成。
「伊豆の踊子」や
「雪国」などの名作が多い。
この人も、
1972年、
逗子の自宅で
ガス自殺をしているのが
発見された。
小説家などと言うのは、
登場人物が多い小説であればあるほど、
作家が
それぞれの登場人物に
きっちりとなりきらなければ
小説の流れがスムーズに行かないのは、
お分かりだと思う。
それほど作家とは
神経が繊細なので、
いろいろと悩むことは多いのである。
夏目漱石。
「吾輩はネコである」は
余りにも有名。
他に
「虞美人草」
「三四郎」
「彼岸過ぎまで」
「それから」など
素晴らしい作品が多い。
しかし、
みんなに知られた作品であっても、
意外と読んでいない人が多いのも事実。
私は
20代に漱石の本に触れ
大ファンとなり、
出版されている彼の本は
全て読みつくした。
そのため、
自分の書く文章にも、
彼の文体の影響が
良かれ悪しかれ大いに出ている。
それはさておき、
彼は
神経衰弱と胃潰瘍に
生涯悩まされ続け、
1916年
大内出血を起こして
「明暗」の執筆途中に死去している。
胃潰瘍は病気なので、
性格とはあまり関係がなさそうだが、
胃潰瘍を知る人は、
性格と胃潰瘍が
いかに関係深いものであるかを
ご理解いただけると思う。
太宰治。
「走れメロス」
「人間失格」など
名著が多い。
作品は素晴らしいし、
作家としての知名度も、
前述の作家に
決して劣らない彼なのだが、
そんな彼も、
1948年、
玉川上水で
愛人と入水自殺をしている。
38歳の若さである。
三島由紀夫。
「金閣寺」
「豊饒の海」など
作品の多さは群を抜いており、
2010年現在での
累計発行部数が
2,400万部以上と言うから
驚きである。
そんな彼が
1970年11月25日、
楯の会隊員4名と共に
自衛隊市ヶ谷駐屯地を訪れ、
バルコニーから
クーデターを促したが聞き入れられず、
その数分後に
割腹自殺をしたことは
余りにも衝撃的な事件だったので、
ご記憶の方も多かろう。
皇室との関係が
いろいろと取りざたされているが、
ここでは詳細は省く。
本題に戻ろう。
作家は
自分の性格を背景にして、
素晴らしい作品を書いていることは
まぎれもない事実である。
しかし、
作品の良さと
作家の性格とは
何の関係もないことも
また事実。
そんな神経質な性格を
たとえば自分が嫌いだからと言って、
その人の作品の価値はない、と
判断することが
誤りであることは、
お分かりいただけると思う。
百田尚樹の
「永遠の0」も
そういう意味で
彼の選挙応援の演説内容と
作品の良さは
全く関係がないことを
改めてここで述べたい。
好き嫌いだけで、
作品を判断する心の目を
曇らせたらいけない。
そんな人は、
これからも
感情論が先走って、
判断を誤る恐れがあることを
充分用心しなければ、
大事なところで、
道を間違う危険がある。
いつも通りに
くどくて長い説明になりましたが、
百田尚樹の
「永遠の0」は
一読の価値がある作品であることを述べて
終わりにしたい。
ご理解いただけたでしょうか。
(作家の写真はネットで公開されている写真をお借りしています。)




