武蔵野の寒い朝 ~霜柱と人生~
霜柱は、
寒ければいつでも立つ、というわけではない。
霜柱の発生原理が、
土の中の水分が凍り、
そのあと毛細管現象で、
次々に土の水分を吸い上げてきて、
氷が上に伸びる現象であるため、
まず、
適当な水分がなければいけない。
適当な水分というのが
どの程度の水分なのかは
数値的には確認していないが、
過去に試したところでは、
前日に花壇に水を撒いたようなところでは、
霜柱は立たず、
地面がそのまま凍り付く。
かといって、
地表が1、2cmの深さまで乾いていれば、
乾いたままの状態で、
霜柱は立たずに、
下の水分が軽く凍るだけである。
寒くなるスピードも
関係するかもしれない。
たぶん
ゆっくりゆっくり冷え込んで、
地表からゆっくり凍っていくときに
霜柱が立つのだろうが、
何時間もにらめっこしたわけではないので、
これは推測である。
その霜柱。
今日の気温はー3.5℃。
今までー5℃の時もあったから、
最高に寒いというわけではなかったが、
花壇には
全面に霜柱が立っていた。
3~4cm位の長さがあるだろうか。
この状態は、
霜柱が見やすくなる時を待ったので、
11時過ぎの状態であるが、
朝は霜柱が傾きもせず、
一斉に地表を押し上げている。
これほど地表がせりあがってくると、
根の浅い植物は、
ごっそりと根ごと押し上げられてしまう。
そして
霜柱が融けた時には、
その植物は
根ごと引き抜かれた状態で地表に投げ出されることになる。
始末に負えないゼニゴケなどは
表面でしか生きていないので、
いとも簡単に氷の上に乗せられる。
それを何回も繰り返されると、
あえなく命はダウンである。
冬の寒さに生き残る植物は、
例外なく根が深い。
引っこ抜いてみるとわかるが、
表面は地面にへばりついて
さほど大きくもないのに、
引き抜くと、
根は身の丈の何倍も伸びて
しっかりと地中に広がっている。
だから、
霜柱でも根が持ち上がらずに、
株のところだけ霜柱が張れない状態を作り出す。
武蔵野の
冬の寒さに耐えるには、
葉がまず霜に耐えることと、
そして
根が深く地中に張ることが必要である。
そうでなければ
武蔵野の冬は越せない。
霜柱は、
土の中にある水分だけが凍ったものだから、
透明できれいなものなのだが、
細い管上になっているため、
光を受けてその管が乱反射をおこし、
人に目には白く見える。
昔言われた
麦踏などという行為は、
このように霜柱で
根が持ち上がってきて、
麦の苗が枯れてしまうのを防ぐために、
畑の麦の苗を踏んで、
地面にしっかりと押さえつけていたのだろうから、
サクサクと
霜柱の折れる音もしようというものだ。
私は南国育ちで、
苗を踏んづけていく行為が
どうしても理解できなかったのだが、
霜柱の立つところに住んでみて、
麦踏みの意味が
やっと理解できた。
厳しい社会で生きていくためには、
生きるべきところに大きく根を張って
そして生きていかなければ、
根なし草では、
いずれ枯れるのはわかっている。
渋谷や原宿や
歌舞伎町のあたりで、
今だけを生きている諸君には、
このように冬を生き抜く植物の強さの原理に、
早く気付いてもらいたいものである。




