父の形見
両親は、
貧しい田舎暮らしの生活を切りつめて、
私を最高学府まで出してくれました。
中学時代の同級生は
3人しか大学に行けなかった頃の話です。
その父は釣りが大好きで、
いつも私は一緒に連れて行ってもらいました。
釣りが私の趣味になっているのは、
その頃の思い出があるからです。
そういう父が、
もう一つ大事にしているものがありました。
報才蘭と万年青。
報才蘭は、
「山川報才」という特別な蘭の花でした。
万年青は、
「鷲高隈」という名前の、
葉に白い模様の入った奇麗な大葉の万年青です。
父が亡くなった時、
それらの株が手元に残され、
私が引き取って育て始めました。
「山川報才」の株。手元にはこのような鉢が3鉢あります。今は新芽が燃え出てくる時で、この株からも数本の芽が育っています。
報才蘭は、
1月の終わりころから2月にかけて
茶色い地味な花を付け、
得も言われぬ素晴らしい芳香を放ちます。
芳香は伽羅や沈香、白檀などとちがい、いわゆるフラワー系の甘い香りです。
父が亡くなってから、
毎年株分けしながら、
転勤のたびに
その地で知り合った方に差し上げてきましたので、
花の時期には、
福岡、広島、四国、名古屋の各地から
咲いたよ~!
と、うれしい便りが届きます。
亡き父が取り持つ人とのつながりです。
この報才蘭と一緒に貰い受けたのが
万年青(おもと)。
白い斑入りの「鷲高隈」。手入れに手抜きをしたので、今年は斑が奇麗に出ませんでした。
鷲高隈という勇ましい名前がお気に入りです。
これは、
万年青と書く名前の通りに、
みずみずしい青さや模様を楽しむもので、
花や香りを楽しむものではありません。
一年中青々としており、
毎年出てくる新芽に、
どのような奇麗な白い斑が入るか
それを楽しみに育てます。
肥料や水や、
日光の当て加減で、
葉の模様が決まると言われていますが、
その株の持つ血統もあるようです。
今年は、斑があまり奇麗に入りませんでしたが、
残雪模様や虎斑模様が入った時は、
実に見事な株になります。
たとえばこれ。
この万年青は、「白雀」という、本来は小葉の万年青ですが、私が意識的に大きく育て、見栄えを良くしています。
こんなに奇麗な模様が入ると、
見ていても飽きません。
植物は、
バラ等の花物が一般的にはもてはやされますが、
こんな渋さを持つ蘭や万年青もあります。
特にこれらは、
オヤジ譲りのものだけに、
私が元気なうちは
いつまでも守り育てていこうと思っています。
今日は少し、しんみりとした話題になりましたが、
暑さを忘れて、父の笑顔を思い出したひと時でした。



