私は食道がんの手術後、約４週間口から食べ物も水も入れることができなかった。

術後、縫合不全という合併症で喉と胃をつなげたところから空気が漏れてしまったのだ。

肩から上はまるで風船のようにふくれあがり、瞼にも空気が入って目も開くことができなかった。

腫れ出したときの写真で、この時はまだ左はよかったのですが、この後更に腫れ上がり両目ともに見えなくなってしまいました。

でも押さえると空気が抜けて瞼は開くのですが、また次第に空気が入ってきて元に戻るといった感じでした。

ちょうど術後４日経過してあすから食事ができると思った矢先の出来事だった。

この合併症のおかげで、首の切り口を再度開き、胃に管を入れられ胸腔ドレーンを再度付けられた。

食べるどころの騒ぎではない。

今までごく当たり前に口から物を入れていたが、それができなくなるなんて考えもしなかった。

もちろん栄養や水は経腸から入れているが、口から食べることができないとまったく元気が湧いてこない。

そのときの経験があったから、これまでごく当たり前に行なってきた「食べる」という行為の大切さに気づくことができた。

食べるという行為は栄養を取るためだけのものではない。

私たち人間が自らの意思で生きるという選択をするための行為なのだ。

自分で口から食べものを入れることで生きるという意思を表に出す。

そして口から物を入れることができない状態は生きているより生かされている。

赤ちゃんが最初は自分で食べることができないのは親に生かされているから。

そして自分で食べることができるようになるに従って、生きているに変わっていく。

そして食べれなくなれば、ほとんどの生き物は死ぬ。

しかし人間はそれでも生かされてしまうことがある。　

それが私の術後当時の何週間かの状態。

それは生かされているということで、生きているとは言えないと思った。

　
したがって、食べるという行為は、生きるという行為の表れなのだ。

その時、私がモチベーションを保てたのは、「絶対に元気になってやる」という決意をしたから。

そんな状態になって私のそれまでの食を振り返ってみると

義務的、やけ食い、暴飲暴食、そして美食

これ、すなわ義務的に、やけになって、自暴自棄に、欲にまみれて生きてきたということになる。

そんな経験を踏んだことで、よくある食事療法をするようになり、はじめてこれまでの食べ方がおかしかったことに気づいた。

とはいっても、多くの人と同じように最初は治すために何を食べるか？

食べてはいない！から始まった。

しかし、あるとき食べれなかったときのこと、その後初めて食べ物や水を口に入れたときのことを思い出し、それば何かおかしいのではないか？と思った。

食べるものやそれに関わる人やめぐみに対する敬意が、食べるという行為の前になければいけないのでは？と。

それから私の食べ物療法は、本当の意味での食べる事の療法と変わっていったのだった。

そして何を食べるかよりも、どう食べるか？を大切にするようになった。

食べることと、どう向き合うか？

それは食という字のとおり、ひとを良くするもの。

さらには「どう生きるか？」という人の生き方と大きな関係性があると思うのだ。

食は病を良くするものではない‼️