「ねえ、とーちゃん。犬飼いたいんだけど。いいよね、お願い」
「えっ? ううん、うさぎがいるじゃねーか」
「だって今買わないと、また誰かに取られちゃうか、処分されるもん」
「ああー?(それってウチに責任ねえだろ)うーん、かーちゃんがいいなら、まあいいか」
・・・これが失敗のもと。出張先の朝、電話がかかってきて、このやりとり。
なんで出張中に判断させんだよっ・・・と今思えば後の祭り。
で、柴犬が我が家に住み着いているのだが、こいつが噛む。特に飼い主に噛む。
俺には特に挑戦的。
最初は「まーかわいい、マメ柴ちゃんかな」とか言われてたのに。
今じゃあ、ニセ柴じゃなくね? あんまりでかくて。 とか言われる有様。
俺の胃潰瘍がめずらしいへんてこな癌に育っちゃったのは、こいつのせいだと思っている。
ああムカつく。それでも頭ぐらいはなでるし、散歩も月に一回くらいは行くけど。噛まなきゃ許すが。
どんなに仕事が忙しくても、それまではストレスを貯めずに調子よくやってきたのに。
柴野郎が来てからどうもいけない。飼って1ヵ月で、初めて胃潰瘍、出血多量で入院。
その1年後は癌の発病だとさ。へっ、柴野郎より先に死にそうな気がするからムカつく。
でも犬を毛嫌うようなことを言うと、あっという間に家族から総スカンを食らう。
仕方がないので、オヤジは、ケージにちょこんと座るうさぎ(赤茶のネザーランド・ドワーフ)を密かにかわいがるのであった。