文部科学省は14日、東京電力福島第1原発事故を受け、全国の小中高生と教員向けに作った放射線教育の副読本を公表した。従来の副読本にあった原発の安全性を強調する記述は消えたが、福島第1原発事故への言及は前書きだけ。同省は授業などでの使い方については各教育委員会や学校の判断に委ねるとしており、実際に学校現場で活用が広がるかは不透明だ。

 副読本は、小中高校の校種別でA4判18~22ページ。児童生徒用と教員用の各2種類が作られた。各教委と学校に1部ずつ配り、同省ホームページでも掲載している。

 小学校は放射線について「一度に100ミリシーベルト以下の放射線を受けた場合、がんなどになった明確な証拠はない」としつつ「受ける量はできるだけ少なくすることが大切」と促している。中学では、放射線の種類や外部被ばく・内部被ばく、防護方法、避難についても説明している。

 福島第1原発事故には「放射性物質が大気中や海中に放出されました。この発電所の周辺地域では、放射線を受ける量が一定の水準を超える恐れがある方々が避難することとなり、東日本の一部の地域では、水道水の摂取や一部の食品の摂取・出荷が制限されました」などと前書きで記述しただけだった。

 従来の副読本には原発について「大きな地震や津波にも耐えられるよう設計されている」などの事実と異なる記述があり、放射線教育への支援を求める要望も寄せられ、同省が見直しを進めた。専門家や教員による作成委員会を設置し、放射線関係団体からも監修を受けた。【木村健二】