福島第一原発事故の損害賠償をめぐって東京電力と被害者が合意できない場合、裁判によらず和解交渉を迅速に進める政府の「原子力損害賠償紛争解決センター」が29日、東京・新橋に開設された。風評被害や避難費用の賠償などが想定され、9月1日から相談や申し立てを受け付ける。福島事務所も9月半ばに設置する。

 和解の仲介は同センターが被害者の申立書を受理し、始まる。農林水産業の風評被害や精神的被害、自主避難の費用といった内容が考えられる。弁護士ら約100人の仲介委員が両者の言い分を書面や面談で聞き、3カ月をめどに和解案を出す。

 1999年に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故では臨界状態が1日で収束し、和解の仲介は2件だった。今回は事故が収束しておらず、政府の指示による避難住民は10万人を超す。同事務局は「どのくらいの件数になるか、正直想像がつかない」という。

 申立書は、自治体の役場などにも置くほか、文部科学省のウェブサイトなどからも入手できる。郵送のみで受け付けるが、記入の仕方など手続きの相談は9月1日から電話(0120・377・155)で応じる。(佐藤久恵)