鳥のなかでも体が小さい「ハチドリ」が、東日本大震災の被災者支援のイメージキャラクターになっている。一人ひとりは微力でも、行動を起こすことの大切さを伝えた南米の民話が共感を呼ぶ。

文化人類学者の辻信一さん(58)がアンデスの先住民族に伝わる民話をもとに2005年に監修した物語「ハチドリのひとしずく」(光文社)がきっかけだ。


1羽のハチドリが、燃えさかる森に一滴ずつ水を落としていく。


「そんなことをして何になるんだ」と笑う動物たちにハチドリは答える。


「私は、私にできることをしているだけ」


地球温暖化防止などの課題に地道に取り組むメッセージと受け止められ、06年までに10万部を発行。東日本大震災でその精神に再び関心が集まった。


「被災地で朗読したい」という声や書店からの問い合わせが版元に相次ぎ、4月に急きょ6千部を増刷した。


物語をヒントにした被災地支援も始まった。


通販大手ニッセン(本社・京都市)は「ハチドリのひとしずく募金」を企画。商品1点を販売するたびに同社が10円を積み立て、5千万円をためた。ハチドリのイラスト付きTシャツも販売し、収益を支援に充てる。