東日本大震災で被災した人たちの心のケアが課題になる中、独立行政法人「産業技術総合研究所」(茨城県つくば市)が開発したアザラシ型のぬいぐるみロボットが、避難所の被災者に「癒やし」を与えている。


なでるとまばたきし、声に反応して鳴き声もあげる。被災者からは「かわいい」と好評で、関係者は今後、多くの避難所に置くことを計画している。


 ロボットの名は「パロ」。


人間の赤ちゃんほどの大きさで重さは2.7キロ。触覚や温度センサーが組み込まれた本格派で、同研究所の柴田崇徳研究員が人の気持ちを和ませるセラピー効果をねらって93年から開発。


05年に1体35万円で発売され、日本ではこれまでに約1500体が販売された。ペット代わりに買う人が多く、国内外の福祉施設でも使われている。


使用後の検査やアンケートでストレス緩和の効果も確認されているという。


 震災後、柴田さんらは避難所生活者のストレス緩和にパロを役立てたいと考え、被災地の自治体に連絡。


4月初めから、産業技術総合研究所があるつくば市の避難所「洞峰公園体育館」を皮切りに、1都5県の12避難所をパロとともに訪問。


洞峰公園体育館には2週間ほど置いたが、避難者が抱き上げて笑顔になったり、動くのを見て喜んだり。


同市災害ボランティアセンターの責任者を務めていた苅谷由紀子さんは「高価なので管理が心配だったが、見るとつい触りたくなる。癒やしの効果はあった」という。


 5月からは福島県南相馬市の鹿島保健センターのロビーに置かれ「パロくん」「シロくん」などといくつかの名前で呼ばれている。


1歳9カ月の男児と避難していた女性(22)は「人の声に反応するのがすごい。避難しているみんなでかわいがっています」。


 柴田さんらは「避難所で引きこもりがちになる人もいると聞くが、パロと触れ合うことで元気づけられるのではないか」といい、今後は、被災地の医療福祉施設などに長期的に置くことを計画している。【岡礼子】



毎日新聞