新日本プロレスで、一番燃え上がるシチュエーションと言えば、因縁試合ではないだろうか?



古くは、猪木の首を付け狙うタイガー・ジェット・シン、会社倒産で新日本プロレスに殴り込みをかけてきたはぐれ国際軍団、『かませ犬』発言の長州と藤波、出戻りUWFと猪木………。



その因縁を煽り立てるのが、関節技なのだ。



猪木対シンと言えば、怒りのアームブリーカー。

執拗な反則攻撃に怒りを顕にした猪木が、シンの腕をへし折った。

以後、アームブリーカーは、猪木対シンは言うに及ばず、猪木の試合に欠かせないスパイスになる。

はぐれ国際軍団の総帥ラッシャー木村との対戦といえば、腕ひしぎ逆十字固めの応酬。

ロープブレークに応じず、反則裁定が下された猪木。

勝敗を度外視した攻防に、我々は、情念を見た。



そして、言わずと知れた藤波と長州の因縁。

プロレスの不文律を乱したといわれる『掟破りの逆サソリ』。

チャンピオンシップであるにも関わらず、ロープブレークを無視し、反則負けを選んだ藤波。

五対五の勝ち抜き戦、大将戦までもつれ込んだ正規軍対維新軍。

長州の繰り出したサソリ地獄を、三分以上も耐えた猪木。



UWFの看板を背負い、猪木の前に立った仕事師藤原。

足関節をめぐる攻防で、藤原に足を極められた猪木は、平然とした顔で、

『力を入れる向きが違う』

と、足首を取り返す。

UWFの象徴と言われたアキレス腱固めをめぐる攻防も、忘れることはできない。



3カウント決着ならば、丸め込みもあれば、反則がらみもある。

しかし、『ギブアップ』を奪うと言うことは、相手をねじ伏せる、と言うことだ。

力で、技で、相手の体を痛め付けて、有無を言わさず、負けを認めさせる。



攻め手と受け手の意地と意地のぶつかり合い、せめぎ合いを、垣間見ることができるのが、関節技の攻防なのだ。



軍団抗争、世代闘争、団体対抗戦、その要所で、関節技をめぐる攻防が、互いの存続をかけて、繰り広げられる闘いのスパイスになる。



余談だが、この極めて、新日本プロレス臭いやり取りを、全日本プロレスに持ち込んだのが、虎の仮面を脱ぎ捨てた三沢である。

タイガー時代は、使っていなかったフェースロックを使い、鶴田に挑んだ。

全日本プロレス初の世代闘争も、関節技から、始まったのだ。