天牌 外伝という麻雀漫画がある。
主人公の黒沢という売人が、麻雀を通して、様々な人間と交流するドラマを描いた漫画だ。

この漫画には、とにかく、人生の指針になるような深いセリフが、ちりばめられていて、落ち込んでいる時や怒りMAX状態の時に、読み返している。
その台詞の数々を、『黒沢語録』として、手帳に書き記している。
先日、新刊が、コンビニに並んでいたので、サラッと立ち読みした。
今回は内容の濃さに驚き、つい、購入してしまった。

『虚実』
雀荘で出会った若者、八木橋は、『小さい頃から、自己防衛本能のためか、つい嘘が口』から出る性格だった。
黒沢は、
『嘘は一度ついちまえば、際限がなくなる』
と、諭すが、八木橋の生きざまは変わらなかった。
距離をおき始めた黒沢に、八木橋が、頼みごとをする。
癌になった知人が、手術を勧められている。
手術すれば、治るが、『世の中に絶対はない』と、手術を拒んでいる。
そんな知人を説得するために、『勝率百%の絶対無敵の雀士がいる』と、嘘を吐いた。
なんとか知人と麻雀を打ってほしいと頼む八木橋に対して、黒沢は、
『八木橋の嘘は許せなかった。が、その対局は俺に与えられた勝たなきゃいけない麻雀のような気がしていた』
という理由で、宅を囲むことにした。

プロの底力を見せ付けた黒沢が、圧勝し、手術を受ける決意をする知人。

その帰り道、黒沢は、八木橋に最後の忠告をする。

『いいか、最後の忠告だ。お前は嘘を吐く場所を間違っている』
『嘘を吐く場所……?』
『俺だって叩けば、いくらでも埃の出る身体。だがなぁ、人様に迷惑がかかるような嘘だけはついたことはねぇ。俺が嘘を吐くのは卓上だけだ。相手の思惑や思考を欺き、少しでも運を手繰り寄せるために、死ぬ気で嘘を吐く。だから、この世界で生きていられる。お前も人様にではなく、自分の嘘を吐くべき場所を、自分で見つけろ』

二年後、八木橋は、ミステリー作家の道を選び、大成する。


『俺が嘘を吐くのはリング上だけだ。観客の思惑や思考を上回り、少しでも喜んでもらうために、体を張って嘘を吐く。だから、この世界で生きていられる。』
胸を張って、こう言える日がくるのだろうか?


『黒沢語録』から、もう一つ、引用したい。

『俺は、麻雀道の探求心だけは、誰にも負けないと自負している。ただ、それだけじゃ許されない世間への筋の通し方を学んだつもりだ』

麻雀道を『プロレス』だったり、『整体』だったり、『自営』だったり、色々、自分に当てはめてみて、たまに、軌道修正することにしている。


敢えて、全体公開にする。