アメリカと日本のプロレス界で、決定的に違うところは、なんだろう・・・と、考えてみたら、ひとつの結論に達しました。
アメリカのプロレスにあって、日本のプロレスにないもの。
それは、マネージャーの存在です。
日本では、マシン軍団のマネージャー、ショーグンKY若松、デルフィン軍団のミスター・トヨタ、IWAジャパンのマヤ・・・、ジョー・カクドーことジョーカー・クドウ・・・、ビッビシいくぞの星野勘太郎、ケンゾー・スズキのリア妻ヒロコくらいでしょうか、私の灰色の脳細胞の中で、ぱっと名前が挙がるのは、これくらい・・・です。
しかし、アメリカでは、マネージャーがつくことにより、レスラーの格が上がるといわれています。
誰もが一流と認めるHBKも、ロッカーズが仲間割れをして、ヒール・ターンし、シングル・プレイヤーとなったとき、センセショーナル・シェリー・マーテルが、マネージャーにつきました。
そのとき、HBKは、『一流になれた』と実感したそうです。
では、歴代のマネージャーの中で、最高を一人選べといわれたら、関係者一同、口をそろえて、一人の名前を挙げることでしょう。
ザ・ブレインこと、ボビー・ヒーナン、通称『イタチ野郎』です。
とにかく、口が回り、レスラーの代弁をさせたら、この人の右に出るものはいません。
WWA、AWA、NWA、WWF、WCW、WWEと、アメリカの大手のプロレス団体を渡り歩き、数々のレスラーのマネージメントしてきました。
AWAのニック・ボックウィンクル、バリアント・ブラザーズ、NWAでは、マスクド・スーパースター、WWFでは、アンドレ、ルード、レイス、フレアー、ヘニング、BJ・スタッド・・・。
その顔ぶれたるや、早々足るもので、『ヒーナン・ファミリー』が、ひとつのブランドになっていました。
Jスポーツの『ヴィンテージ・コレクション』で、80年代の試合を見ると、リングサイドで、ヒーナンがうろうろしている姿を見ることができます。
よくホーガンやアルティメット・ウォリアー、時には、ジェーク・ロバーツあたりに、ちょっかいを出して、お仕置されるのが定番ですが・・・。
プロレス・スーパースター列伝のホーガン編で、ニック・ボックウィンクルとヒーナンが、ハンディキャップマッチで、ホーガンを痛めつけるシーンがありますが、その元ネタと思われる試合が、ハルク・ホーガン・アンソロジーに収録されていました。
「すなわち、目ん玉と金玉!」は、狙ってはいませんでしたが、相変わらず、姑息なファイトぶりで、ファンのブーイングを浴びていました。
毒舌と乱入などで試合をコントロールする姑息なまね、そして、ベビーから逃げ回る姿などから、ファンからは、親しみをこめて、「イタチ」と呼ばれています。
ヒーナンのマネージャー・スタイルは、スリック、ジミー・ハート、シェリー・マーテルなどに受け継がれ、その遺伝子は、またさらに、新しい世代のマネージャーに受け継がれていきます。
そればかりでなく、WWFのコメンテーターとして、軽快なしゃべりで、いやみな解説者を演じきりました。
その、偏りに偏ったヒールよりの解説は、キング・ジェリー・ローラーや最近のマイケル・コールに受け継がれているといえます。
ヒーナンの存在は、エンターティメントとしてのプロレスを支える重要なピースのひとつだといえるのではないでしょうか。