WWE(WWF)は、時々、『んあっ?』と思うレスラーが、チャンピオンになります。
長い目で見れば、その判断が正しいことが、分かりますが、その時、その瞬間だけ見たら、『んあっ?』となるわけで。
古くは、あのミック・フォーリー、最近では、ミズが、ベルトを巻いた時に、そう感じたものです。

私が、一番、びっくりしたのは、スティーブ・オースチンが、チャンピオンになった時でした。

私が、『スタニング』スティーブ・オースチンのファイトを初めて見たのは、WCWのビデオで、フライング・ブライアン・ピルマンとの『ハリウッド・ブロンズ』というタッグチームでした。

デビューして、二、三年と言うことでしたが、リッキー・スティームボードやアーン・アンダーソン辺りと、対等に渡り歩くインサイドワークは、まさに、新人離れしていました。
オースチンと言えば、『スタナー』『テーズ・プレス』『凶悪ストンピング』『ビールガブ飲み』で、試合を成り立たせています。
しかし、スタニングなオースチンは、全く別なタイプの『小悪党』なレスラーでした。
インサイドワークに適度な反則を織り交ぜ、それはもう、地道にダメージを積み重ねて行く…、NWAに代々伝わる一番クラシカルなヒールでした。
短く刈り上げられた金髪のダサイことダサイこと。
ぶっとい太股に白いシューズ、黒地に白い星のショートタイツ。
うん、ダサイ。

しかしながら、レスラー仲間を含む関係者一同からは、評価が高く、4ホースメンのアーン・アンダーソンの好敵手として、何度もタッグ・タイトルを巡り、ビッグマッチのラインナップに、顔を出していました。
ちょうどその頃、フレアーも、WWFからカムバックし、レスリングの手が会う相手を探していました。

新日本で開催された第二回G1クライマックスに初来日。
NWA復活トーナメント第一回戦で、アーン・アンダーソンと、玄人好みの渋いレスリングを展開し、『スタンガン』で、白星をあげました。
当時の必殺技の『スタンガン』は、ロープから返って来た相手をベアハッグのように抱え、そのまま、後ろに倒れ込み、トップロープに相手の喉を打ち付ける…という荒技でした。
いかにも、アメリカ受けしそうな技ですが、初めて見た方の大半は、『ポカ~ン』だと思います。
私もそうでした。

NWAチャンピオンになった蝶野の防衛戦に抜擢され、両国大会のメインに出場しましたが、この時、危険な角度で放ったパイルドライバーで、選手生命に関わる怪我を負わせています。
(後年、オーエン・ハートのパイルドライバーで、オースチン自身が、首を破壊されたのと、全く同じ状況です)

その後、WCWにnWoブームが到来。
エリック・ビショフの大号令の元、元WWFのレスラーが、WCWのリングを蹂躙し始めました。それと同時期に、WCWを離脱。
紆余曲折を得て、WWEにたどり着き、チャンピオンにまで、登り詰めたのですから、まさに、大出世でした。

スター不足で、視聴率低下が心配されるWWEですが、いつか、また、オースチンのように、大ブレイクするスターが、どこかにいる筈です。