朴 明子(パク ミンジャ)ごま書房新社
がん体験談本としては様々な要素が盛り込まれています。
医療者(看護師)の立場、ステージ4患者、頭頸部というアピアランスアイデンティティが大きく関わる部位、余命宣告、現在進行形の自覚症状と機能低下・・・。
胸に刺さる記述は読者によって異なるでしょう。ただひとつ明白なのは、この本は闘病記録ではなく未来に宛てたメッセージだということです。
朴さんは「キャンサー・ギフト」という言葉に違和感を覚えます。
・・・なぜなら、がんは私からあまりに多くのものを奪い去ったからです。その総量はたぶん、もたらしてくれたギフトよりも多いと感じます。看護師としてのキャリア、健康な体、美味しいものを味わう味覚、においを感じ取る嗅覚・・・。それらを奪い取っておきながら、最後に少しばかりの「気づき」を置いていったからといって、「素晴らしい贈り物をありがとう!」と喜んで受け取ることなど、私にはできません。(p99)
そこで朴さんが思いついたのが「キャンサー・シフト」。
朴さんはがんになる前を【朴明子 シーズン1】、発症後を【朴明子 シーズン2】としました。
シーズン1は「獲得と競争」。
シーズン2は「共感と使命」。
物語のテーマが、がんを境にがらっと変わった~シフトした~という認知にしたのです。
・・・それは、がんがくれたプレゼントではなく、私自身が変化した環境に適応し、生き方の軸をチューニングしなおした結果でしょう。(p100)
私たちはこの本を通して、「朴明子さんという生き物の進化」を目の当たりにするのです。
生物学的進化とは生存のために環境適応することです。地球誕生から48億年の間に、生物は幾度もの大絶滅の環境変化を乗り越えて生命を繋いできました。「進化」は時にはあらたな能力を獲得することであり、また時には生き延びるため使っていた機能を失うことでもありました。
人生にはいろいろな出来事が好むと好まざるとにかかわらず起こります。(宿命) でも受け入れるしかない環境変化にも、能動的に進化適応することはできます。(運命)
限りある一生、どんな進化をデザインしますか?
朴さんは、未来のあなたに呼びかけています。
それが今を尊く生きることになるのです。
*9/13(日)がん患者会NPO法人いずみの会主催「体験談&交流会」(会場:名古屋市千種区 トムズスイスカフェ)に朴明子さんをゲストスピーカーにお招きします
*朴明子さんの体験談記事はこちら!

