「て…て…てぇへんだぁ~!」
息咳切って 寄宿舎に飛び込んで来た レンの様子に ただ事では無いと悟った石竜子は、側にいた隊士に 直ぐ様 鴫原達を呼んで来るよう命じる。
「いったい 何があったのだ レン!詳しく聞かせてくれ」
「そ…その前に 水~!もう、喉がカラカラだじぇ 竜兄ぃ」
解った!と 言って 厨房にとって返す石竜子。
程なくして 入れ替りに駆け付ける 鴫原と鷲尾。
「何事だ、レン!」
「あっ、たいちょーに じはんだい。エライ事になっちまったよぅ……」
半ベソ状態で 荒い呼吸を繰り返す彼の元へ 水の早く入った湯飲みを手に 石竜子が戻って来た。
「レン!さ、水だ。落ち着いて ゆっくり飲むのだぞ?」
だが、言ってるそばから 急ぐあまり 思わず むせ込んでしまうレンの背中を 石竜子は優しくさする。
「けほっ、ごほっ。あ~ びっくりした。あんがと 竜兄ぃ」
「で、何が どうなっているのだい?順を追って 説明してくれないか?」
むせ込みながら 頷くとレンは これまでの経緯を語り始めた。
みるみる 表情が強ばり 事の重大さに 三人は すわ!と 色めき立つ。
「………こうしちゃいられないよ、司!」
「ああ、俺達も急ごう。レン 案内を頼む!」
「合点!任せとけー!」
三人に続き 殿(しんがり)を行こうとする石竜子を、部屋の隅に 立て掛けてあった妖刀 応答丸が派手な 鞘鳴りを立てて 制止した。
「……応答丸?」
そっと近付き それを手に取ると 応答丸の意思が 身体を伝って 何かを訴えかけて来る
「………共に 行くと……言うのか?」
石竜子の問いに 今度は 小さくガチャリと 返事をする応答丸。
一瞬、戸惑うも 彼はそれを帯に 落とし差し 寄宿舎を飛び出して行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
深草町 郊外を流れる半田川。
その河川敷に作られた 竹の柵。
玉砂利の上に敷かれたむしろには、後ろ手に縛られ 目隠しされた 力丸、鷺沼、神谷が座らされていた。
それぞれに三人の 介錯人(かいしゃくにん)が付き添い 斬首する刃は 深草不動尊の湧き水で 清められる。
「さて…、今生(こんじょう)の別れに 何か言い残す事があるなら 聞いてやろう…」
相変わらず居丈高な物言いの 同心 村上
「流石、村上の旦那だ。心が海よりも広うござんすねぇ」
火が着きそうな程 揉み手 擦り手で 媚びへつらう 太鼓持ちの岡っ引き 十郎太は 恩着せがましく。
「やい、鬼共。せめてもの情けだ!苦しまず ひと思いに 彼の世に送ってやるから 有り難く思いなぁ!」
「くそ……っ、好き勝手 ぬかしやがって…」
血が滲むほど 強くこぶしを握り締め 鳩般蛇は 無意識に神谷から 視線を外した。
「 目を反らすな、鳩般蛇」
「しかしだな…っ、やはり 見るに堪えねぇ……」
「愛する者の最後を見届けるのが、私達に課せられた使命だ」
絞り出す様に呟く 破旬の目にも うっすら光る物が見て取れた。
「破旬……お前っ」
「九鎧様っ、楓様達が……。私は もう堪えられません…」
「すまぬ 緑。だが、お前への想いは 決して変わらぬ。死をも 二人を別つ事は出来ん…」
それに答える様に 緑(りょく)は 九鎧の背中に回した手に 一層 力をこめたのだった。
「別れの挨拶は 済んだか?じゃあ、そろそろ 引導を渡してやるとしましょうかね 旦那ぁ」
「よし、やれ!」
村上の号令に 三人の介錯人が 刀を上段に振り上げた 次の瞬間……。
「ちょっと 待ったぁ!」
雄叫びと共に その内の一人に 突進して来た人物。
八百辰の店主 辰五郎であった。
その後も 次々 介錯人に掴みかかる 町の人々。
止めろ!押すな!の 怒号が飛び交う最中 すきを見て お久美、小菊、夏芽の三人が 縛られていた 力丸達の目隠しを外してゆく。
一方、お勝達 他の女性陣も クワや 竹ぼうきを手に 同心達に 食ってかかった。
「おのれっ!町人風情が お上に楯突くとは 不届き千万!只で済むと思うなっ」
「へぇぇ…、面白い事言うじゃないか。只で済まないって?なら いくら出してくれるのさぁ お役人様ぁ」
「何だと、このアマぁ!手前ぇらも この鬼共々 同罪だ!!」
十郎太が 己の手で、首を ちょん切るしぐさをすると お勝は やれるもんなら やっとくれな!と 啖呵を切る。
「お久美さん、どうして……?」
「助けに来たの。みんな 力丸さん達が 何よりも大切な人達だって 気付いたのよ」
「お久美さんっ!」
「楓君も……良かった 無事で」
「もう、本当に ここに来るまで 生きた心地がしなかったのよ 俊介君…」
河川敷は、あっという間に 敵 味方 入り交じって 大混乱。
混沌とする中、響いて来た 威厳ある声。
「一同、静まれ!!」
その主は 夜業局長 刑部 弾正のもの。
颯爽と 土手を滑り下り その勢いで 抜刀するなり 切っ先を 村上の目の前に突き付けた。
「この場は、御公儀禁衛隊 局長 刑部 弾正が預り受ける!双方 引きませい!」
遂に間に合った!
(≧∇≦)良かった~♪
ゴールデンウィークは旦那が休みなんで バタバタ憂鬱。
短めですが、もっさり続きまふ
(* ̄∇ ̄*)