店主です。
私の大好きだった映画「スワロウテイル」が4Kリマスター上映されていると知り、滑り込みで鑑賞してきました。
TOHOシネマズ日比谷
「ちいかわ」のようにどこでもやっているような映画ではなく、都内でも限られた映画館、さらにその限られた映画館でも1日に一回しか上映がなく、タイミングが悪ければ行けずじまいという感じでした。
9月4日〜24日までの短期間の上映ですので、もう迷ってる時間はなく、慌ててチケットを入手しました。
多分、これを映画館で観なかったら一生後悔するだろうなと思ったからです。
水曜日は気まぐれ営業で早仕舞いできますし、チケット代も安い曜日です。時間も21時10分スタートでしたので、最高のタイミングで行けたのかなと思います。
ちなみに、私が行った23日も完売、最終日の24日も完売でした。
30年前の岩井俊二監督作品になりますが、30年前といえば私は13歳でした。
当時の私からしたら随分と大人な作品でしたし、そもそもR指定だったのでリアルタイムで鑑賞することはありませんでした。
初めてこの作品に触れたのは、16歳の専門学生時代のことです。
レンタルビデオのTSUTAYAで、暇つぶしに何作品が借りた中の一つでした。
私は批評家ではありませんし、稚拙な文章でこの名作を語るのは気が引けるのですが、それでも語らずにはいられません。それほど私の中で想いが溢れてしまってどうしようもない…誰か一人だけにでもいいから、スワロウテイルを知って欲しい。そんな思いで書いています。
主観ですが、この物語はグリコ(CHARA)、フェイホン(三上博史)、アゲハ(伊藤歩)それぞれの視点からなる群像劇のように思います。
明確な主人公はいないような、そんなイメージです。しかしそれは裏を返せば観る人によって主人公が決まる、そんな作品なのではないでしょうか。
架空の近未来の日本。世界で一番"円"が強かった時代に、円を求めてやってきた移民達の物語です。
人々を魅了する歌声を持ち、胸の真ん中にアゲハ蝶のタトゥーがある娼婦のグリコ
なによりもグリコの歌が大好きで、エネルギッシュな反面少年的な繊細さが垣間見えるフェイホン(作中の私の推し)
薬物売買のトラブルでマフィアに殺された娼婦の娘で、ひょんなことからグリコと行動を共にすることになった少女、アゲハ
退廃的でありながら時に情熱的に、時に叙情的に、メインの3人の人生が交錯しながら物語が進んでいきます。
大きなテーマとして「音楽」があるのですが、重要なシーンで流れてくるフランクシナトラの「マイウェイ」は、この物語にとってキー曲になります。
「グリコ!シング!マイウェイ!」
フェイホンにリクエストされ、グリコは甘く囁くよう歌い始めます。歌声に聞き入り静かに優しい眼差しを向けるフェイホンの表情。
フェイホンの、少年のような真っ直ぐで純粋な愛に感情移入して43歳オッサン、不覚にも泣いてしまいました。
このシーンは作中屈指の名シーンと言っても良いでしょう。
フェイホンは後に逮捕され、警察による暴力的な取り調べによって死んでしまうのですが、今際の際までマイウェイを口ずさんでいたようで、グリコのことが本当に大好きだったんだろうだなって思います。
蝶の看板が空に吊り上げられるシーンも、個人的にはかなりの名シーンですね。
収容所を出ることが出来て、超ハイテンションでようやくグリコに会える!そんなときに空に飛んで行く蝶(yen town bandの広告看板)を見て、呆然と立ち尽くすフェイホン。
遠くに羽ばたいていったグリコの邪魔をしないよう、自ら悪役になり身を引く潔さ。
もうね、これはフェイホンの愛の物語ですよ。改めて作品を観て、そう思いました。
ちなみに、脇役も豪華で若かりし頃の渡部篤郎、山口智子、江口洋介や大塚寧々なんかも出演しています。
上映は終わってしまいましたが、まだ観たことがない人はレンタルやサブスクで是非観てください。
スワロウテイルに限った話ではないですが、昔観た数十年前の映画を再び観るということは"時の流れを確かめるための時間"でもあると思うんです。
キャストの外見の変化に時の流れを感じられるというのは当然のことなのですが、当時観た時の自身の記憶だったり、作品から伝わるメッセージやテーマの受け取り方の変化によって、自分自身の成長を感じ取れることもあります。
単に作品が「面白い」だけではなく自分の人生を見つめ直す時間にもなるのではないでしょうか。
27年前、ヤンキースタイルのジャージ姿、ノーヘルバイクに咥えタバコでレンタルビデオ屋に向かっていた16歳の少年が、27年後にありったけのオシャレをして日比谷の映画館に車で向かうなんて、誰が想像できたでしょうか。
27年前、なんとなくタイトルとキャストに惹かれレンタルして、ただ単にアンダーグラウンドな世界観が好きなだけで繰り返し観た16歳の少年が、27年後にフェイホンの純粋な愛に感情移入して涙を流すことを、誰が想像できたでしょうか。
物語の余韻に浸り「swallowtail butterfly〜あいのうた〜」を口笛で吹きながら地下の精算機に向かいました。
しかし…
(え、高っけ…映画2回観てもお釣りくるやん…)
という感じで、すぐに現実に引き戻された店主でした。









