エンジン:SR20DET水冷直列4気筒DOHC16バルブICターボ
最高出力:205PS(151kW)/6,000rpm
最大トルク:28.0mkg(274.6Ｎ・ｍ)/4,000rpm
総排気量:1,998cc
ボア×ストローク:86.0×86.0mm
圧縮比:8.5対1
サスペンション
Ｆストラット式
Ｒマルチリンク式
ブレーキ形式
Ｆベンチレーテッドディスク
Ｒディスク
タイヤサイズ:205/60R15 91H
トランスミッション:5MT
ボディサイズ:L4,520×W1,695×H1,290mm
ホイールベース:2,475mm
トレッド:1,465/1,460mm
車重:1,220kg
日産180SXは、1989年から1998年まで生産されたスポーツカーである。その誕生は、日産がスポーツカー市場における新たなニーズに応えるために企画された。1980年代後半、日本の自動車市場は高性能なスポーツカーへの関心が高まり、多くのメーカーが新しいモデルを投入していた。日産もその流れに乗り、既存のシルビアをベースにした新しいスポーツカーを開発することを決定した。
180SXの開発は、日産のエンジニアリングチームによって行われ、その目的は「若者に手頃な価格で提供できる、高性能でスタイリッシュなスポーツカー」を作ることにあった。この車は、シルビアS13と多くのコンポーネントを共有しつつも、独自のデザインと性能を持つモデルとして設計された。特に、リトラクタブルヘッドライトを採用したスタイリッシュなエクステリアデザインが特徴である。
1980年代から1990年代にかけて、日本の経済はバブル景気に沸き、自動車産業もその恩恵を受けていた。この時期、多くの若者が高性能なスポーツカーを求め、特にドリフト走行やモータースポーツへの関心が高まっていた。1986年に登場したシルビアS12は成功を収めたが、さらなる進化が求められた。
また、環境規制の強化や燃費性能の向上が求められる中で、軽量かつ高性能なエンジンの開発が不可欠となった。日産はこうした市場のニーズに応えるため、新しいプラットフォームと技術を取り入れた180SXを開発することで、競争力を高めることを目指したのである。
180SXの開発は、日産自動車の優秀なエンジニアチームによって主導された。その中でも特筆すべき人物は、当時の日産のスポーツカー開発を牽引していた加藤博文氏である。加藤氏は、シルビアやフェアレディZなど、多くの名車を手がけてきた経験豊富なエンジニアであり、180SXの開発にもその豊富な知識と経験を活かした。
加藤氏のビジョンは、単に速い車を作るだけでなく、ドライバーが操る楽しさを感じられる車を作ることにあった。そのため、軽量化とバランスの取れたシャシー設計、そしてレスポンスの良いエンジンの搭載が重視された。また、デザイン面でも、リトラクタブルヘッドライトや流麗なボディラインなど、視覚的にも魅力的な要素が取り入れられた。
180SXのパフォーマンスは、その搭載エンジンとシャシー設計に大きく依存している。主要なエンジンオプションは、以下の通りである。
CA18DET: 初期モデルには1.8リッター直列4気筒DOHCターボエンジンが搭載され、最高出力は175馬力を発揮する。このエンジンは軽量でありながら、ターボチャージャーによって高出力を実現している。
SR20DET: 後期モデルには、2.0リッター直列4気筒DOHCターボエンジンが搭載され、最高出力は205馬力に達する。このエンジンは、CA18DETに比べてトルクが豊富で、高回転域でのパフォーマンスが優れている。
トランスミッションは、5速マニュアルが標準装備されており、滑らかなシフトフィールが特徴である。さらに、180SXはリアホイールドライブ（RWD）方式を採用しており、ドライバーに優れたハンドリングとコントロール性能を提供する。特に、ドリフト走行においてはそのバランスの良さが評価されている。
180SXのデザインは、リトラクタブルヘッドライト、スムーズなボディライン、大型リアウィングなど、スポーティでありながらエレガントな要素が組み合わさっている。インテリアは、ドライバー中心の設計がされており、メーターパネルやシフトレバーなど、操作性を重視したレイアウトとなっている。
180SXは、カスタマイズのベース車両としても非常に人気が高い。SR20DETエンジンは、アフターマーケットパーツが豊富に揃っており、ターボのアップグレードやエキゾーストシステムの変更など、多岐にわたるチューニングが可能である。また、サスペンションやブレーキの強化、ボディのエアロパーツ装着など、外観と性能の両方を向上させる改造も盛んに行われている。
180SXは、特にドリフト文化において重要な役割を果たしてきた。D1グランプリなどのドリフト競技では、多くのドライバーが180SXを使用し、そのパフォーマンスと操作性が高く評価されている。また、映画「ワイルド・スピード」やアニメ「頭文字D」など、多くのメディアに登場し、広く認知されている。
日産180SXは、その時代のスポーツカー市場において重要な位置を占めるモデルであり、その優れたデザイン、パフォーマンス、カスタマイズの自由度、そして文化的影響力が融合した、非常に魅力的な車である。ドライバーに純粋な運転の喜びを提供し続ける180SXは、今後も多くのカーファンに愛され続けるだろう。その存在は、時代を超えて色褪せることなく、自動車の歴史に名を刻み続けるに違いない。