「ファンファーレ!!」大阪初日
2026年9月15日 フェスティバルホール
※セットリスト・演奏内容についてのネタバレを含みます。

2026年9月15日。
大阪・フェスティバルホール。
「玉置浩二 with 故郷楽団 Concert Tour 2026 ファンファーレ!!」大阪初日を観てきました。
【この日の故郷楽団】
Vocal:玉置浩二
Keyboards:トオミヨウ
Guitar:秋山浩徳
Percussion:中北裕子
Bass:川崎哲平
Drums:松原 “マツキチ” 寛
Saxophone / Flute:門田 “JAW” 晃介
Violin:吉田宇宙
Violin:名倉 主
Viola:大辻ひろの
Cello:稲本有彩
今回のライブを振り返ってみると、新しい曲だけではない。
1980年代の安全地帯、1990年代の玉置浩二ソロ、2000年代、2010年代、そして2025〜2026年の新曲まで。
40年以上にわたる玉置浩二の音楽を
「今の声」と「今の故郷楽団」で作り直しているようなコンサートだった。

前半
ファンファーレから「あこがれ」
ステージは「ファンファーレ」をモチーフにしたようなインストから始まった。
そこへドラムのロール。
そして「あこがれ」。
これまで自分の中にあった「あこがれ」のイメージとは少し違う。
ドラムが入ってくることで、曲に新しい推進力が生まれている。
ツアータイトルでもある「ファンファーレ」とつなぐことで、あえてこういうアレンジにしたのだろうか。
【楽曲メモ】「あこがれ」/1993年3月24日発売。玉置浩二のソロ第2作『あこがれ』のタイトル曲。
安全地帯の活動休止後に発表された作品で、後のオーケストラとの共演にもつながっていくようなクラシカルな響きを持つアルバムでもある。
そこへ今の故郷楽団のリズムが入る。
新鮮だった。
「希望の光」
安全地帯のドラマー田中さん唯一の発表曲。
かなり音数を抑え、必要最低限のコード感だけを残したように聴こえた。
派手なアレンジにするのではなく、曲がもともと持っているイメージへ戻したのかもしれない。
【楽曲メモ】「希望の光」/2013年3月6日発売、安全地帯『安全地帯XIV ~The Saltmoderate Show~』収録。
「海路」
間奏での玉置さんのスキャットが素晴らしい。
ただ、自分自身が久しぶりにこの曲を聴いたせいなのか、最初は演奏が少し硬く感じた。
たぶん演奏している側ではなく、聴いている自分の問題なんだと思う。
耳が曲に馴染んでくるにつれて、その感覚も変わっていった。【楽曲メモ】「海路」/2013年『安全地帯XIV ~The Saltmoderate Show~』収録。
中北裕子さんのパーカッション
ここで中北裕子さんのパーカッション・ソロ。
鈴のような繊細な音。
一瞬、「指の戯れ」のようにも感じた。
そこから「結界」を思わせるような空気になり、雷が落ちる。
激しい雨。
そして馬の鳴き声。
単なるソロというより、次の曲へ向けてステージ上に「景色」を作っていくようだった。
「R-『★』指定」
これは良かった。
以前「結界」の頃にライブで聴いた印象より、今回の方が自分にはしっくりきた。
キーは少し下がっていたかもしれない。
でも玉置さんの場合、高いか低いかということ自体があまり問題にならない。
大切なのは、そのキーで何を表現するかだと思う。
この曲にはレゲエ的な感覚もありながら、シャッフルするリズムの気持ちよさがある。
聴いていると自然に身体が揺れる。
【楽曲メモ】「R-『★』指定」/2011年9月14日発売『安全地帯XII』収録。
歌詞には「昭和生まれの田舎暮らし」から「見据えた相手は米国だった」という、安全地帯の原点を想起させる言葉も登場する。
個人的には、以前ライナーノートで「R」は練習=Rehearsalを指している
という趣旨を読んだ記憶がある。
安全地帯がアマチュアだった時代。
当時の若いミュージシャンたちの視線の先には、アメリカやイギリスのロックがあった。
Led Zeppelin、Deep Purple、Black Sabbath。
安全地帯の話でよく名前の出るDoobie BrothersやEaglesはアメリカのバンドだ。
そんな時代に北海道から海の向こうを見ていた若者たちの感覚が
この曲には残っているように思う。
SAXソロから「愛してんじゃない」
門田“JAW”晃介さんのSAXが会場を盛り上げ、そのまま「愛してんじゃない」へ。
これは圧巻だった。
歌手について語る時、「どこまで高い声が出るか」が注目されることが多い。
でも玉置浩二という歌手の凄さは、それだけではない。
Aメロの低めの声。
言葉を少し溜めながら置いていく感じ。
そこからサビへ行った時の声の広がり。
この低音から高音までの表情の幅こそ、玉置さんの大きな魅力だと思う。
【楽曲メモ】「愛してんじゃない」/1994年12月12日発売、ソロアルバム『LOVE SONG BLUE』収録。
曲の最後には短いドラムソロ。
松原“マツキチ”寛さん、良かった。
ただ、安全地帯の曲でドラムが前に出てくると、どうしても田中裕二さんを思い出してしまう。
身体は決して大きくなかったのに、田中さんのドラムには独特のアタック感があったんだなあ、と改めて思った。
川崎哲平さんのベースソロから「ショコラ」。
サビの玉置さんの声。
ファルセットなのだろうか?
そう思うくらいなのに、あまりにも力強くてファルセットに聴こえない(笑)。
【楽曲メモ】「ショコラ」/2003年9月18日「雨のち晴れ/ショコラ」としてシングル発売。同年10月22日発売『安全地帯X ~雨のち晴れ~』にも収録。
ギターソロから「MR.LONELY」
秋山浩徳さんのギターから「MR.LONELY」。
一瞬、安全地帯っぽいなと思った。
でも、やっぱりドラムの感じが違う。
ハイハットなのか?
リムショットなのか?
玉置さんの歌い方は2番の終わり辺りが少し変わったように感じた。
2011年の安全地帯『XIII JUNK』でセルフカバーした時に聴かせていたメロディーの崩し方、あのフェイク感が自分は好きだった。
今回は少し原曲のメロディーへ戻してきたようにも感じた。
それはそれでいい。
【楽曲メモ】「MR.LONELY」/1997年8月6日シングル発売。同年9月21日のソロアルバム『JUNK LAND』収録。2011年には安全地帯『安全地帯XIII JUNK』でセルフカバー。
だから同じ曲でも、「ソロのMR.LONELY」と「安全地帯のMR.LONELY」という二つの記憶がある。
そして最後のスキャット。
玉置さんがマイクを外す。
生声。
これはもう、音量の問題ではない。
直接、心の中に入ってくる。
「やせっぽっちの星」
トオミヨウさんのピアノから始まる。
「やせっぽっちの星」。
これは泣くよね。
スクリーンに映るCherryちゃんまで
途中から玉置さんに見えてきてしまった。
ここで前半終了。

約20分休憩

後半
再び「希望の光」から
後半は「希望の光」をモチーフにしたインストからスタート。
前半と後半が別々のものではなく、一つの物語としてつながっているように感じた。
「花束じゃなくキミといたい」
絢香さんとのデュエットで発表されたばかりの曲。
もちろん二人で歌うバージョンも素晴らしい。
でも玉置さん一人で歌うと、また違う。
より静かで、より個人的な歌に聴こえる。
【楽曲メモ】「花束じゃなくキミといたい」/絢香の2025年アルバム『Wonder!』収録曲。2026年には「花束じゃなくキミといたい feat.玉置浩二」が制作され、8月19日に先行配信。9月9日発売『20 Lights - The Collection -』にも収録。
その曲を玉置さん一人で歌う。
ライブならではだった。
「命の宿り」
そして「命の宿り」。
大阪初日の翌日、2026年9月16日発売の玉置浩二・ASKA「音銀河」のカップリングとして収録された新曲。
つまりこの日は、CD発売前夜に聴いていたことになる。
命の尊さを描いた詞と温かなメロディー。
どこか昔の玉置さんの曲にも通じる、素朴で温かい匂いを感じた。
新曲なのに懐かしい。
そういう曲だった。
「サーチライト」
【楽曲メモ】2013年11月27日発売のシングル。2014年3月19日発売『GOLD』にも収録。日本テレビ系ドラマ『東京バンドワゴン~下町大家族物語』のエンディングテーマ。
いい曲なんだけど……。
今回のセットリストを聴きながら、
「ここを別の曲にする選択肢もあるんじゃないかな?」
とも少し思った。
これは完全に個人的な好み。
玉置さんには、まだライブで聴きたい曲が山ほどあるからだ。
「熱視線」
これは嬉しかった。
【楽曲メモ】「熱視線」/1985年1月25日発売。安全地帯8枚目のシングル。
今回は、いわゆる安全地帯そのままの「熱視線」ではない。
少しラテン的。
Aメロのスネアの感じのさいなのだろうか?
リズムの置き方が違う。
オーケストラ公演などで聴くことはあっても、
ソロツアーのバンド編成で「熱視線」を聴く機会はそれほど多くないので、これは嬉しかった。
2番では近年よく使っている原曲とは異なるメロディーライン。
さらに2番最後は、加速していくような歌い回しへ変化。
間奏後にはブレイクも入る。
以前よりやり過ぎず(笑)、ちょうどいい感じだったと思う。
そしてこの曲で、それまで座って静かに聴いていたフェスティバルホールの空気が一変した。
堰を切ったようにオールスタンディング。
鳴りやまない拍手。
歓声。
「ここから後半戦だ」というスイッチが入った瞬間だった。
そしてメンバー紹介へ。
「JUNK LAND」
凄かった。
【楽曲メモ】「JUNK LAND」/1997年9月21日発売のアルバム『JUNK LAND』タイトル曲。
昔の「JUNK LAND」を古い車に例えるなら、今回のJUNK LANDには最新鋭のエンジンが積まれているようだった。
とにかくキレる。
玉置さんのリズム。
メロディー。
言葉。全部の切れ味が増している。
9月13日に68歳になったばかり。
それなのに、この曲はまだ進化している。
「JUNK LAND」って、まだ完成しないの?
と思ってしまう。
最後は玉置さんとオーディエンスの掛け合い。
そして玉置さんは、自分が全力投球したものを、そのまま客席にも「やれ!」と返してくる。
無茶振りだよ(笑)。
でもやってしまう。
それがライブなんだろう。
「田園」
【楽曲メモ】「田園」/1996年7月21日発売。同年9月13日発売『CAFE JAPAN』収録。フジテレビ系ドラマ『コーチ』主題歌。
やっぱり盛り上がる。
今やこの曲は「代表曲」というだけではなく、玉置さんと客席が一緒に作る曲になっているように思う。
「ファンファーレ」
そしてツアータイトル曲。
【楽曲メモ】「ファンファーレ」/2025年10月13日先行配信、11月5日CD発売。TBS系日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』主題歌。
発売からまだ1年も経っていない。
それなのに、もう会場全体が知っている。
去年生まれた曲とは思えないほど、ライブの中心に育っている。
まさかの「Happy Birthday」
トオミヨウさんがピアノを弾き始める。
「あ、メロディーだ」
と思った。
ところが玉置さん、
「ハッピー……」
そして会場全体でHappy Birthday。
玉置浩二、1958年9月13日生まれ。
この公演のわずか2日前に68歳になったばかりだった。
大阪のみんなで68歳の誕生日を祝う。
いい時間だった。
「メロディー」
【楽曲メモ】「メロディー」/1996年5月22日発売。アルバム『CAFE JAPAN』にも収録。
今回の「メロディー」は優しかった。
言葉を一つ一つ噛みしめるように歌う。
少しゆっくりにも感じた。
この曲を聴いていると、いろいろな人や出来事が頭に浮かんでくる。
それぞれの人に、それぞれの「メロディー」がある。
やっぱり素敵な曲だ。
ハケたメンバーがステージに再び現れて
「じれったい」
ここで「じれったい」。
【楽曲メモ】「じれったい」/1987年4月21日発売。安全地帯15枚目のシングル。1988年発売『安全地帯VI ~月に濡れたふたり』にも収録。
この位置で「じれったい」をやられると
「まだまだ聴きたい!」
という気持ちになる。
今回はややゆっくりめ。
テンションを必要以上に上げず、少し大人っぽく聴かせる「じれったい」だった。
ソロはSAX。
それも今回の故郷楽団らしい。
メンバーはステージを降り、
玉置さんだけがステージに
このあと玉置さんが安全地帯について話した。
来年迎えるデビュー45周年。
そして、その先の50周年。
安全地帯は1982年デビューだから、45周年は2027年、50周年は2032年になる。
玉置さんの口から「その先」の話が出る。
それだけでも嬉しい。
最後は「夏の終りのハーモニー」
大阪初日の最後は「夏の終りのハーモニー」。
最後は会場みんなで歌った。
【楽曲メモ】「夏の終りのハーモニー」/井上陽水・安全地帯名義で1986年9月25日シングル発売。同年12月14日発売の『安全地帯V』にも収録。
そして、この曲には特別な歴史がある。
1986年8月20日、21日。
神宮球場で開催された井上陽水と安全地帯のジョイントコンサート「スターダスト・ランデヴー」。
そのステージでも披露された曲だ。
あれから40年。
2026年。
大阪フェスティバルホールで、玉置さんと客席全員が「夏の終りのハーモニー」を歌う。
9月15日という季節まで含めて、これ以上ないエンディングだったのかもしれない。

終わってみて
今回、一番強く感じたのは、
「昔の曲を再現しているライブではない」
ということ。
「熱視線」も、「JUNK LAND」も、「MR.LONELY」も、「じれったい」も、昔と同じではない。
テンポも違う。
リズムも違う。
メロディーを変える。
間を変える。
声の使い方も変える。
だから昔の音源と違っていて当然なんだと思う。
68歳の玉置浩二が
2026年のバンドと2026年の声で歌う。
その瞬間しか存在しない音楽だ。
もちろん、
「昔のあの歌い回しが好きだったな」
「安全地帯田中さんのドラムだったら、ここはこうだったな」
と思う瞬間もある。
でも、それも含めて楽しい。
40年以上聴き続けられる音楽だからこそ、昔と今を比較できる。
そして比較するたび、
「また変わったな」
と思わせてくれる。
2026年9月15日。
大阪フェスティバルホール。
最後にみんなで歌った「夏の終りのハーモニー」。
この日の余韻は、しばらく残りそうです。
2026年9月16日




