前回の続き。4月2日、オオクチユゴイを狙い宮古島にやって来たT19は、ライトソルトに浮気して道草食いまくった挙句、不注意でレンタサイクルの鍵を折ってしまい、激しい自己嫌悪の中ホテルへ。
シャワー浴びたり服洗いに行ったりしてる間、「グ~ッ!」と何度も腹が鳴って、体が食事を求め続けてます。
しょうがないじゃん、タコライスで今日の栄養は摂り切っちゃったんだ。
ただでさえ、自分への甘さが露呈したばかり。ここで妥協して間食しようもんなら、すぐに糖尿病は発症する!
13「よっ!時化た顔してんな~」
T19「何もかも俺が悪いんだよ。寄り道せずユゴイポイントの下見だけしとけばチャリ傷めることはなかったし、吉野家の誘惑に負けず鶏肉と野菜メインの晩飯にしとけば、もっと腹いっぱい食えたんだ」
13「ほれ!」
13「ま~食え、飲め」
T19「今日は医者に言われてる栄養制限の数値まで食ってるから、これ以上は」
13「自転車漕いでカロリー使ったろ?少しぐらいオーバーしても平気だ」
T19「いいや、自分を甘やかしたら、これからの人生どんどん」
13「良いからさっさと食え!」
T19「・・・」パク
T19「・・・美味い・・・美味い・・・!」
13「酸いも甘いも生きてく上では絶対必要だと、忘れちゃいかんぞ」
3日。7:00起床。身支度を済ませホテル出発。
まずはレンタサイクルショップに自転車持ってって謝らねば・・・店員さん怒るかな・・・修理代高いのかな・・・。
もうすぐ店に着くかという8:58、突如スマホが騒ぎ出して、曰く「台湾で地震が起きて、それに伴う津波が間も無く宮古島に襲来する」とのこと。
・・・泣き面に蜂と言うか、ここまでツイてないと神がかり的なモノを感じます。
こういう時はパニクっても仕方ないんで、丘の上へ行ってスマホ片手に続報待ち。
しばらくして、❝島に30センチの津波が到達❞って情報が入り、一先ず大津波の危機は去ったようで、やっとお店へ。
店員のおっちゃんに「すみませんでした!」と謝ると、「鍵折れちゃったか~!ごめんだけど鍵代は頂戴ね~」と笑顔の応対。
「車体の傷も、修理代払います」と言ったら、「これぐらい良いよ。よくあること。それより津波小さくて良かったよね~」と言ってもらえて、私は鍵代1万円を払ったのみ、代車も用意して頂き、おっちゃんの器の大きさに頭が上がりませんでした。
色々やってたら12:30、既に津波注意報は解除されてましたが、海は昨日散々楽しんだし、今日という今日は川へ!
オオクチユゴイは海で産卵する時以外は淡水で生活し、本州のトラウトやバスのポジションを占める魚らしい。
河口から800メートル程、澄んだ本流に濁水が流れ込む良さげなポイントを見付けスプーンをキャスト!で、即HIT!
いきなり来たんじゃないのかオオクチユゴイ!?
あれ?・・・コイツはターポン!?
現れたのは新魚種、パシフィックターポンこと『イセゴイ』!若魚ながら独特な顔付きがイカツくて良い!
もう1本ターポンが掛かるもバレてしまい、このポイントは沈黙。更に上流へ移動します。川幅がだいぶ細いため、スプーンのサイズを落として水草の際にキャスト。そしたら平たい魚影が追って来てHIT!あのシルエットは間違い無いんじゃないの!?
えぇ!?お前、宮古島にも居たのか!
まさかのティラピア!アフリカ原産の外来魚。コイツは群れで行動するし、1本居たら近くに10本は居るはず。
このポイントはユゴイの望み薄だったから、もっと上流へ。
他と比べ水深のある場所を見付け、アジング用ワームでネチっこく誘ってみます!
そしたら、コッ、コッ、と突くようなアタリの後、ゴツッ!と明確に食ってきてフッキング!
重たくてよく走るけど、どうもティラピアっぽいなぁ。よし、揚がって来た!
チヌじゃねぇか!こんな上流まで上って来るのか・・・。
よく見ると奄美に居たオキナワキチヌと違い、尻ビレ、腹ビレが黒ずんでいて、新魚種『ミナミクロダイ』でした!
色々釣れて超絶楽しいんだけども、肝心のオオクチユゴイが気配すら無いってどうなってんだろ?
その時、軽自動車が走って来て、「こんちは!釣れますか?」と声を掛けてきたのは色黒マッチョなお兄さん。
T19「今チヌが釣れたんですけどね、本命のオオクチユゴイが全然ダメで」
お兄さん「本土からの遠征の方ですか?」
T19「あ、そうです」
お兄さん「オレ等はジャングルパーチとかミキユーって呼ぶから、ユゴイ言う人は本土の人だってすぐ分かるんですw」
T19「お兄さんも釣りされるんです?」
お兄さん「前はこの辺でよく釣ってましたよミキユー!でも最近は海ばっかだね」
チラっとお兄さんの車内を覗くと、巨大なポッパーが山ほどぶら下がってて、「やっぱ島人はスケール違うな」と痛感。
「頑張って下さ~い!」と言って走り去るお兄さん。
俺の場所選びは間違ってなかった!確かにこの川には狙いの魚が居るんだ!
更に川を遡り、源流域に到達。水深は1メートルも無く、流れは意外と緩い。
木陰にミノー投げてトゥイッチングしてみたら、スーッと追い掛けて来る20センチ位の魚!
しかしソイツ、ユゴイとはかけ離れたライギョみたいな体型で、胴に模様が見える・・・何者だ?
バイトには至らず、底に貼り付くヤツ。その頭上にマイクロスプーンを通すと、やはり興味は示すもののアタックはしません。
T19「あかん!正体が気になり過ぎる!この謎魚、必ず釣り上げる!」
13「セコ釣り用のスプーン見切られて、これ以上どうする気だ?」
T19「そらもう超セコ釣りよ!」
雑魚用ファイバーサビキのウェイト部分をマス針に変え、パワーイソメをチョン掛け。
1口サイズなのにアピール力抜群のファイバーと、パワーイソメの匂いによる2段攻撃!さぁ好きな方を食え!
仕掛けを流れに乗せて送り込むと、ヤツは迷わずパワーイソメに食らい付く!
深呼吸して・・・フッキング!よし乗ったっ!よっしゃ釣れた~!
何だコイツ!?優男顔のタライロンって感じの魚体に、青、赤、黄の斑点が散らばる美しいカラーリング。
私T19、直感的に「凄い貴重な魚かも・・・」と察して、急いで写真撮ってリリース。
手持ちの魚図鑑をめくっていくと、個性的な姿故すぐに正体が判明しました。
その名は『タメトモハゼ』。何とハゼの仲間で、やはり珍しい在来種だった模様。
予想だにしてなかった出会いに感激した私T19、力強い風と陽射しの中、心を覆っていた暗雲を吹き飛ばし明るく照らしてくれた宮古島に感謝の想いを湛え、静かにパックロッドを仕舞ったのでした。
たくさんの出会い、同じぐらいたくさんのトラブル、でも振り返ってみれば何やかんや、良い想い出。
これが釣りの楽しさ、旅の楽しさ、生きる楽しさなんだと、心に刻み込めた2泊3日。
ティンバー「ほんで、オオクチユゴイは?」
T19「・・・ホントに実在すんのかな?」
今回の決まり手:モバイルパック+月下美人MX+ナイロン4ポンド+ピュア、レイブⅡ、フィジットヌード(JH)、ちょこっと川サビキ、パワーミニイソメ(トレーラー)